2019年11月号掲載
ものづくり「超」革命 「プロダクト再発明」で製造業ビッグシフトを勝ち残る
Original Title :REINVENTING THE PRODUCT
著者紹介
概要
デジタル変革が急速に進む今日、製品の価値も激変しつつある。これからは、ハードウェアではなく、ソフトウェアが主役に。売って終わりの製品から、コネクテッド化されたインテリジェントな製品へ ―― 。ものづくり企業が生き残るには、こうした製品の「再発明」が不可欠と指摘し、製造業に押し寄せている大変化を解説する。
要約
新たな世界へようこそ
デジタル技術による創造的破壊と変革の嵐が、ビジネスの世界に押し寄せている。それに伴い、様々な企業がビジネスの再構成を迫られている。
このデジタル革命が目指すのは、業務効率の向上だけではない。革新的なデジタルビジネスの展開やインテリジェントな製品の創出も含まれる。
近年、産業用多目的ロボットの数は劇増した。いずれこれらのロボットはインテリジェントになり、適応能力やコミュニケーション能力を身につける。その結果、企業の生産性はさらに向上し、コスト構造や必要とされるスキル、生産現場に重大な変化が起きる。
「スマート・コネクテッドプロダクト」の特徴
この急激な変革を推進するのが、スマート化された製品だ。従来の製品はコネクテッド化されていない受動的なものだった。だが今後、企業は「スマート・コネクテッドプロダクト」を生み出す必要がある。これは、次の4つの特徴を持つ製品だ。
- ①クラウドや他のデバイスに接続されている。
- ②データ処理能力や様々なセンサーを搭載するなど、知性を備えている。
- ③人工知能(AI)や音声認識などのテクノロジーを駆使して、学習できる。
- ④製品として販売されるのではなく、成果型の「アズ・ア・サービス(サービスとして)」ビジネスモデルを通じて販売される。
スマート・コネクテッドプロダクトは、ソフトウェアやデジタルテクノロジーを組み合わせて、ハードウェアをユーザーやクラウドなどと結びつける。このようにインテリジェンスを高めたソフトウェアは、日常的に利用されるようになり、独自の新たな経済を生み出す。
顧客との関係を一新する
これまでの企業はずっと、幅広いマスマーケット向けにハードウェアの製造だけに注力してきた。だがこれからの企業は、顧客との関係を一新し、個別にパーソナライズされたサービスを提供する。顧客の需要に合わせ、ソフトウェアにより瞬時に反応・適応するコネクテッドデバイスを通じて、リアルタイムで「生きた」成果を提示する。
このスマート・コネクテッドプロダクトヘの移行で、莫大な価値が生まれる。好例がアップルだ。
1997年にスティーブ・ジョブズがアップルに戻った時、同社は破産寸前だった。だが、コネクテッド化し、インテリジェント化したデジタルデバイスやデジタルサービスへの移行を進めた結果、2018年には世界で初めて時価総額1兆ドルを達成した企業となった。
デジタル化でハードウェアの価値は低下する
ジョブズは2007年、iPhoneを発表した時、「電話を再発明する」と言った。
「再発明」とは、「自社が提供し得る社会価値を常に再定義し、モノへ具現化すること」である。再発明で重要なのは、すでにある機能または価値を組み合わせた時、製品価値が増大することだ。つまり、圧倒的に高い価値を創出する組み合わせを見つけ出し、モノとして実現することである。
製品を根本的に再発明しなければならないのは、価値を生み出すものが劇的に変化しているからだ。つまり、製品の価値を生み出すものが、ソフトウェアへと移行しているのだ。