2019年11月号掲載
中国「草食セレブ」はなぜ日本が好きか
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年9月9日
- 定価935円
- ページ数249ページ
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著者紹介
概要
年間1000万人に迫る勢いで急増する訪日中国人。その半分以上は20~30代の若者で、高級ホテルに出入りしたり、ブランドの限定品を買ったりしている。彼らは何者? 金銭的余裕と旺盛な物欲を兼ね備えた「プチ富裕層」の消費性向を、中国人実業家が分析した。迎える側、日本のインバウンドの可能性、課題についても触れる。
要約
なぜ中国の若者はリッチなのか
海外旅行で日本を訪れる中国人は増え続けている。日本政府観光局が発表した2019年上半期の訪日中国人数は、11.7%増の453万人。過去最高を更新した。下半期はさらに増える可能性が高く、1年間で1000万人に迫るのではないだろうか。
レクサスで辛抱しておくか
最近、日本の人々からこういう質問を受ける。
「ニュースを見ると、中国経済はかつてほど順風満帆に思えない。それなのに、どうして日本に来る中国人は減らないのですか?」
確かに工場閉鎖やリストラのニュースを中国でも見かけるようになった。だが、海外旅行に関しては、その影響がダイレクトに出てくるとは限らない。だから、私はこう答えることにしている。
―― 中国の自動車販売台数は2019年7月まで13カ月連続で減少しているが、日本車は絶好調である。トヨタの販売台数は2019年7月まで17カ月連続で、前年同月の数字を上回っている。
中国の富裕層も景気の減速を感じていないわけではない。でも、まだまだ余裕があるのだ。だから、彼らはこう発想する。「景気が悪いからポルシェは諦めて、レクサスで辛抱しておくか」。
日本では最高級車であるレクサスも、彼らにとっては次善でしかない。これは海外旅行に関してもいえる。これまでヨーロッパの高級リゾート地でバカンスを過ごしていた富裕層が、これからは「近場の」日本へやってくる可能性がある。
プチ富裕層とは何か
中国は日本人には想像もつかないほどの格差社会で、資産が1兆円を超える超富裕層までいる。彼らは数が少ない上に、欧米志向が強い。一方、ミドルクラスは数が多い。何をもってミドルクラスとするかは諸説あるが、最近よく目にするのは、日本の総人口より多い3.5億人という数字だ。
彼らは消費能力が高く、日本製品の大ファンでもある。日本を個人旅行するのも、この層である。超富裕層は欧米のブランド一辺倒だが、ミドルクラスは「中流の国」日本の商品に反応する。
その3.5億人のうち上位1億人ぐらいを、私は「プチ富裕層」と呼んでいる。プチ富裕層は、今日本を個人旅行している人たちの主流である。
なぜ年に何回も海外旅行できるのか
プチ富裕層には、年に何回も家族連れで海外旅行している人が少なくない。なぜそれが可能かというと、やはり不動産バブルの影響が大きい。