2020年3月号掲載
鈴木敏文の経営言行録
- 著者
- 出版社
- 発行日2020年1月6日
- 定価14,850円
- ページ数669ページ
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著者紹介
概要
40歳でセブン-イレブンを創業。以来、日本の流通にイノベーションを起こし続けてきた鈴木敏文氏の言行録である。222の言葉を、「経営姿勢」「マネジメント」「仮説と検証の仕事術」の3テーマに分けて収録。「変化への対応と基本の徹底」を実践するために、氏が繰り返し社員らに語った言葉の数々は、多くの示唆を与えてくれる。
要約
変化への対応と基本の徹底
私はセブン&アイグループの経営を担う上で、「変化への対応と基本の徹底」という二大スローガンを掲げ続けた。
このスローガンを実践するため、どのように仕事に向き合い、いかに発想すればいいのか。私は毎週毎週、社員たちに自分の言葉で直接語りかけ、仕事の仕方と発想の仕方を血肉化させた。
経営者と社員をつなぐのは言葉であり、その数は何千何万にも上った。例えば ――
トップダウンには腕力も必要
経営に集団指導体制はありえない。必要なのはボトムアップではなく、リーダーシップである。
かつての売り手市場の時代は、需要が旺盛だったため、売り手が自分たちの都合で商品をつくっても、いいものを安く提供すれば売れた。今は買い手市場の時代であり、めまぐるしく変化する顧客ニーズに対応するため、自分たち自身が変わり続けなければならない。
だが、人間は変わることに抵抗する。そのため、合議制では変えることは難しい。変化の時代には、トップが決める責任を果たさねば組織は前に進めず、市場の変化に置いていかれることになる。
改善ならばボトムアップでもいいが、改革するにはトップダウン以外ない。しかも、思いきった手を打つには豪腕さえ必要だ。腕力のない経営者は組織を変えられないだろう。
消費は経済学ではなく心理学で
一人ひとりの非合理な動きの積み重なりがマクロ経済であり、それが理屈どおり動くと考えるほうが不思議だ。
一般的な経済学の見方では、「所得水準が上がらないから消費も回復しない」と考えるが、本当は、将来に対する先行き不安が消費の伸びを鈍らせている。マクロで経済を考える人たちは、消費は一定であり、消費者がすでに買ってしまったものはもう売れないと考えるが、人間の消費は経済合理性だけで動いているわけではない。
資本主義社会を成り立たせているのは、根源的には人間の欲望だ。よりよいところに住みたい、よりいいものを着たい…。欲望に合致するものや欲望を刺激するきっかけがあれば、タンスが一杯でも、人は買う。それが人間の心理だ。
消費は経済学ではなく、心理学で考える。消費が人々の心理に左右される傾向が顕著になっていることを肝に銘ずべきだ。