2020年4月号掲載
無形資産が経済を支配する 資本のない資本主義の正体
Original Title :CAPITALISM WITHOUT CAPITAL:The Rise of the Intangible Economy
- 著者
- 出版社
- 発行日2020年1月30日
- 定価3,080円
- ページ数359ページ
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著者紹介
概要
ソフトウェアやノウハウなど、物理的なモノではない資産を「無形資産」という。これが近年、先進国で増えており、一部の国では、土地・建物などの有形資産をしのぐほど。その台頭は「ちょっとした変化ではすまない」という著者たちが、無形資産の全貌を分析した。有形資産とは違う特徴や、生産性や格差に及ぼす影響などを説く。
要約
無形資産の台頭
国内総生産(GDP)は、「消費・投資・政府支出・純輸出」の価値の合計と定義される。
そしてごく最近まで、国の統計局が計測する投資は、すべて有形資産だった。
だが、もちろん、経済は有形資産だけで回っているわけではない。例えば空港は、滑走路やターミナルといった有形資産だけでなく、見たり触ったりしづらいものも所有している。ソフトウェア、航空会社や小売り業者との合意、社内のノウハウ。こうしたものはすべて、物理的なモノではなく、アイデア、知識、社会関係でできている。経済学では、これらは「無形資産」と呼ばれる。
経済が“非物質的なもの”に依存するようになる、という発想は目新しいものではない。
アルヴィン・トフラーやダニエル・ベルのような未来学者は、1960年代や1970年代から「ポスト工業化」の未来について語っていた。1990年代にコンピュータとインターネットの力が明白になると、非物質的なものが経済には重要だという発想は、広く受け入れられるようになった。
ニューエコノミーを計測する
ドットコムバブル崩壊後、2002年に所得と富に関する研究会議に経済学者たちが集められた。彼らは、「ニューエコノミー」と呼ばれるものに対し、人々が行っている種類の投資をどう計測すればよいか、考えるために呼ばれたのだ。
この種の投資がどういうものか考えるために、当時、世界で最も時価総額が高かったマイクロソフト社を見てみよう。
同社の2006年における市場価値は、2500億ドルほど。資産を計上するバランスシートを見たら、総資産は700億ドルほどで、うち600億ドルは現預金や金融資産だ。工場や設備といった伝統的な資産はたった30億ドル、同社の資産の4%という微々たるものだ。
つまり、伝統的な資産会計によると、マイクロソフト社は現代の奇跡だ。これは、資本なき資本主義なのだ。
マイクロソフト社の無形資産とは?
この会議からほどなくして、メリーランド大学のチャールズ・ハルテンは、マイクロソフト社の帳簿を精査して、いくつかの無形資産を確定した。同社が研究開発や製品デザインへの投資で生み出したアイデア、ブランド価値、社内構造、研修で構築した人的資本などだ。
こうした無形資産は、物理的実体を持たないが、どれも投資の特徴を持つ。同社はこうしたものに時間とお金を費やした。そしてそれらは、同社が恩恵を受けるような価値をもたらした。