2020年5月号掲載
タルピオット イスラエル式エリート養成プログラム
- 著者
- 出版社
- 発行日2020年3月18日
- 定価1,760円
- ページ数207ページ
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著者紹介
概要
近年、“起業国家”として世界の注目を集め、豊富なハイテク人材を輩出しているイスラエル。同国の躍進を支えているのが、スタートアップを取り巻く独自のエコシステム(生態系)だ。その中核を成す、国防軍のテクノロジーリーダー育成プログラム「タルピオット」に焦点を当て、イノベーションが生まれる秘密に迫る。
要約
イスラエルを支える「エコシステム」
イスラエル ―― 。人口は約900万人、面積は四国と同じくらいの小国だ。
そんなイスラエルの経済成長は目覚ましい。1990年代頃から高い経済成長率を記録し、2018年の経済成長率は3.4%と、アメリカ(2.9%)を大幅に上回った。
牽引しているのはハイテク産業だ。イスラエルは「スタートアップネーション(起業国家)」と呼ばれるほどにハイテクスタートアップを輩出しており、毎年1000社近くが産声を上げている。
その背景には何があるのか?
イスラエルでは、起業家を輩出する土壌が培われている。中でも重要な要素として挙げられるのは、ユダヤ教やユダヤ人の持つ議論の文化、徴兵制を背景としたイスラエル国防軍の人材教育、そしてスタートアップを取り巻くエコシステム(生態系)である。それらを具体的に見ていこう。
「言われた通り」にはやらない
同国在住のある起業家は、イスラエル人は仕事の依頼があると、言われた通りにやることは少なく、「(指示されたやり方ではなく)こっちのやり方のほうがいいと思う」と、必ず自分なりに工夫してやろうとすると話す。
そもそも、与えられた指示通りに考えていては、既存のやり方の延長線上でしかアイデアは生まれない。まずは前提条件を疑うところから始め、新しい発想で課題を解決しようとする。それがイスラエル流なのだ。
権威に挑戦することもためらわない
ユダヤ人は約2000年前にイスラエルの地から追放され、世界各地に離散し、迫害や差別を受けてきた。親しかった隣人が、手のひらを返すように差別する側に回る姿もたくさん見てきただろう。国も制度も、絶対的に信頼できる存在ではない。
そうした背景から、人に与えられた情報をうのみにするのではなく、自分で問いかけ、見極めて判断するしかないという思想が染みついているのではないだろうか。
ユダヤ人が、自らを表現する際の言葉に「フツパー」がある。「大胆」「図々しい」といった意味を持つ。彼らは権威に挑戦することもためらわない。疑問を投げかけたり議論したりする相手は、自分の上司だけでなく、ビジネスパートナーやその上層部なども含まれる。
教育システムとしての「兵役」
イスラエルを語る上で、避けて通れないのが徴兵制だ。周辺を敵国に囲まれて誕生したため、やむを得ず採用された徴兵制だが、結果的に、若者に発想力や責任感、起業家精神を身につけさせる人材育成システムとしても機能している。