2020年5月号掲載
スモール・イズ・ビューティフル 人間中心の経済学
Original Title :Small is Beautiful:A Study of Economics as if People Mattered
- 著者
- 出版社
- 発行日1986年4月10日
- 定価1,518円
- ページ数408ページ
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著者紹介
概要
第2次大戦後、世界経済は飛躍的な成長を遂げた。その礎となったのは、自然環境を破壊する生産体制と、富を求める人々の貪欲さだ。だが、こうした繁栄はいつまでも続かない。やがて資源は枯渇し、エネルギー危機が訪れる ―― 。現代社会の根底にある物質至上主義を鋭く批判し、「人間中心の経済学」を考察した名著である。
要約
生産の問題
現代人は、科学や技術の発達に夢中になって、資源を使い捨て、自然を壊す生産体制を作りあげてしまった。富さえ増えれば、すべてがうまくいくと考え、カネを万能とした。
こうして生産を増やし、富を手に入れることが現代の最高の目標となった。これに比べれば、他の目標はどれも、口先でこそ重んじられてはいるものの、低い地位しか与えられていない。
このような唯物主義の哲学が、今日、現実からの反撃を受けている ―― 。
「自然という資本」の重要性を忘れた現代人
過去3、4世紀の間に、自然に対する人間の態度は変わってきた。現代人は、自分を自然の一部とは見なさず、自然を支配する任務を帯びた存在だと思っている。現代人は「自然との戦い」などと馬鹿げたことを口にするが、その戦いに勝てば、「自然の一部である人間」が実は敗れることを忘れている。
ごく最近まで、自然との戦いは人間に有利に展開し、人間の戦力は無尽蔵という幻想を抱かせた。そして、科学・技術の驚異的な進歩に支えられたこの幻想から、生産体制には何ら問題はないという幻想が同時に生まれてきた。
後者の幻想においては、「自然という資本」の重要性が忘れられている。
実業家ならば、会社が資本をどんどん食いつぶしているのを見れば、会社は軌道に乗っているなどとは考えまい。とすれば、「宇宙船地球号」に乗り込んでいる豊かな国々の経済を考える場合に、この重大な事実を見逃していいものだろうか。
なぜ、この重大な事実が見逃されたかといえば、我々が現実から遊離し、自分の手で造りだしたもの以外は、すべて無価値なものとして扱ったからである。
資本の無駄遣いは、文明の存続を危うくする
我々は、生産の手助けをしてくれる資本を造りだすために働いている。科学・技術知識、物的インフラストラクチュア(産業基盤)、各種の資本設備等の資本がそれである。だが、これらは我々が使う資本のごく一部に過ぎない。
資本の大部分は自然からもらうのであって、人間が造りだすのではない。ところが、人はそれを資本と認めようとさえしない。そして、この自然という資本が、今日驚くべき勢いで使い捨てられている。
例えば、化石燃料(石炭・石油・天然ガス)。これが資本であることにはいささかも疑問がないが、資本として扱われていない。