2021年2月号掲載
統計はこうしてウソをつく だまされないための統計学入門
Original Title :DAMNED LIES AND STATISTICS:Untangling Numbers from the Media, Politicians, and Activists
著者紹介
概要
「嘘には3つある。普通の嘘と、真っ赤な嘘と、統計だ」。この言葉が示す通り、世間にはインチキな数字が溢れている。そして、多くの人はそのことに気づかず、間違った統計を鵜呑みにしがちだ。そんな数字の落とし穴に警告を発した、統計学の入門書。おかしい統計が生まれる原因、騙されないためのノウハウを平易に説く。
要約
武器として用いられる統計
「嘘には3つある。普通の嘘と、真っ赤な嘘と、統計だ」 ―― 。
この有名な警句が示す通り、統計は評判が悪い。統計は間違っているかもしれない、統計を使う人は数字を用いて真実をゆがめ、人々を操作しようとしているかもしれないと、私たちは疑う。
だが同時に、私たちは統計を必要としている。この問題は拡がっているのか、何人くらいの人に影響を及ぼすのか…。私たちは統計に頼って、こうした複雑な社会問題の本質を知ろうとする。
では、私たちは統計にどう接すればいいのか。
論点の裏づけとして使われる統計
19世紀の米国人は、売春の拡がりに気をもんでいた。売春を「社会悪」と捉える改革論者は、多くの女性が売春をしていると警告した。
売春婦の数については多数の推計があった。例えば1866年、ニューヨークのメソジスト教会は、同市には売春婦が1万1000~1万2000人いると主張した。また、5万人いるとの推定もあった。
一方、警察などはもっと低い推定値を出していた。例えば、1872年の警察の報告によると、売春婦は1223人しかいなかった。
売春に反対する改革論者は、大きな数字を使って世間の怒りを呼び起こそうとした。これに対して警察は、売春婦は比較的少ないと反論した(警察がきちんと仕事をしているという証拠だ)。
このように異なる立場の人が自分の論点を裏づけようとする際、統計が武器として用いられた。
数字で嘘をつく
活動家や記者など問題を宣伝する人は、統計を武器として使う。人々の関心をある問題に引きつける、あるいは問題から関心をそらす数字を選び、提示する。この傾向を表現した古い言葉がある。
「数字は嘘をつかなくても、数字で嘘をつく者はいる」