2021年11月号掲載
RAPPORT 最強の心理術 謙虚なネズミが、独善的なライオンを動かす方法
Original Title :RAPPORT
著者紹介
概要
他人と心を通わせることは、日常生活でも仕事でも欠かせない。では、心の結びつき ―― 「ラポール」は、どうすれば作れるのか? カギは、相手への接し方と、会話スタイルにある。その具体的な内容を、CIAにも指導する心理学者が解説。テロ容疑者の取調べでも有効性が確認された、科学的調査に基づく対人スキルの書だ。
要約
ラポール:人間関係を動かす原則
「ラポール(rapport)」
この言葉を定義するのは難しい。2人の人間がいて、心が“カチリ”と音を立てて結びつくことがラポールだと、多くの場合、理解されている。
辞書には、「お互いの同意、相互理解、および共感によって特徴づけられる調和的関係」とある。ラポールとは、2人の人間がお互いに「知り合う」ことで形成されるのだ。
*
他人と心を通わせることは、親密な関係を形成する上で必要不可欠な技術だ。日常生活でも、仕事上でも重要である。
それだけではない。気難しい人たちから情報を引き出す上で、最良の方法でもある。
2012年、私たちは、テロ事件の容疑者から情報を効果的に引き出す戦略を研究するため、高価値抑留者取調委員会(HIG)の一員としての権限を与えられた。この委員会は、FBIやCIA、国防省といった政府機関からの人員で成り立ち、取調べにおける世界的な科学研究の中心である。
私たちは、拷問に代わり得る方法を探るために研究を行っている。
昔の取調べでは、苛酷なテクニックが使われていた。睡眠を奪ったり、ストレスを与えたり、虫や水でいっぱいの部屋に閉じ込めたりした。
だが、これらのやり方はまったく効果がないことが研究で明らかにされている。そればかりか、偽りを含んだ情報を引き出してしまうか、容疑者が完全に口をつぐんでしまう、というケースがほとんどであった。
私たちが明らかにしたのは、「ラポールを形成すること」、すなわち心の結びつきを作ることが、最も信頼できるやり方だということである。