2022年3月号掲載

ハーバードの美意識を磨く授業

Original Title :AESTHETIC INTELLIGENCE

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著者紹介

概要

「美意識」―― 感覚を通じて得られる喜びや満足感が、これからビジネスで重要になるという。物があふれる今日、消費者は製品の特性や機能より、感動や意味のあるものを求めているのだ。この美意識を磨き、活用する方法を、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンで活躍した後、ハーバード大学の人気講座で教える著者が解説する。

要約

なぜ「美意識」が必要か

 一般的に「美意識」という言葉は、物事がどのように見えるかを説明する時に使われる。ビジネスにおいては、製品やパッケージのデザイン、ブランドイメージ、企業理念などに用いられる。

人が「高い料金を払ってもいい」と思う時

 ところが、この言葉が意味するところを深く捉えれば、単に「見た目の優雅さ」にとどまらないことに気づくはずだ。

 「美意識」とは、人が自らの感覚を通じて対象や経験を理解し、知覚することで得られる喜びや満足感のことだ。

 美意識に支えられたビジネスであれば、消費者が「喜んで買いたい」と思うような製品やサービスを提供できる。消費者は、そうした製品やサービスの「利便性」に対してではなく、見た目、味、香りや音、手触りといった「感覚上の満足」に対して、快く高い料金を支払うだろう。

 すべての職業人は、美意識とは何かを明らかにし、自身の業務にどう適用するかを学べば、美意識の持つ力によって利益を得られるだろう。

 私は、この「美意識をビジネスに生かす」という極めて重要なスキルを「美的知性」、あるいはAesthetic Intelligenceの頭文字をとって「第2のAI」と呼んでいる。

独自の美意識を磨き、魅力を高める企業

 先進的企業、例えばアップル、アディダス、スターバックスなどは、それぞれの伝統を重んじる一方で、常に独自の美意識を磨き、製品の魅力、製品への憧れを高める努力を欠かさない。

 こうした企業は、競合と類似した製品を持つ。例えば、アップルのスマートフォンは、サムスンのそれと同等の処理能力を持つ。また、エアビーアンドビーとマリオットは、個人旅行者向けの宿泊サービスを競り合いながら提供している。

 エアビーアンドビーでの予約は直感的に行えて、楽しい。ウェブサイトは見やすく、洗練されていて、機能面もわかりやすい。さらに重要なのは、人に夢を与えるように構築されていることだ。

「存在価値を得る」ために不可欠なもの

 物があふれている今の時代、消費者はもはや物欲に駆られることはなく、「意味や意義のあるもの」を求めている。だからこそ、永続していくブランドは、意味や意義のあるものを提供し、感性に訴えかけ、想像力をかき立てようとするのだ。