2022年3月号掲載
ハーバードの美意識を磨く授業
Original Title :AESTHETIC INTELLIGENCE
- 著者
- 出版社
- 発行日2021年12月10日
- 定価1,980円
- ページ数334ページ
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著者紹介
概要
「美意識」―― 感覚を通じて得られる喜びや満足感が、これからビジネスで重要になるという。物があふれる今日、消費者は製品の特性や機能より、感動や意味のあるものを求めているのだ。この美意識を磨き、活用する方法を、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンで活躍した後、ハーバード大学の人気講座で教える著者が解説する。
要約
なぜ「美意識」が必要か
一般的に「美意識」という言葉は、物事がどのように見えるかを説明する時に使われる。ビジネスにおいては、製品やパッケージのデザイン、ブランドイメージ、企業理念などに用いられる。
人が「高い料金を払ってもいい」と思う時
ところが、この言葉が意味するところを深く捉えれば、単に「見た目の優雅さ」にとどまらないことに気づくはずだ。
「美意識」とは、人が自らの感覚を通じて対象や経験を理解し、知覚することで得られる喜びや満足感のことだ。
美意識に支えられたビジネスであれば、消費者が「喜んで買いたい」と思うような製品やサービスを提供できる。消費者は、そうした製品やサービスの「利便性」に対してではなく、見た目、味、香りや音、手触りといった「感覚上の満足」に対して、快く高い料金を支払うだろう。
すべての職業人は、美意識とは何かを明らかにし、自身の業務にどう適用するかを学べば、美意識の持つ力によって利益を得られるだろう。
私は、この「美意識をビジネスに生かす」という極めて重要なスキルを「美的知性」、あるいはAesthetic Intelligenceの頭文字をとって「第2のAI」と呼んでいる。
独自の美意識を磨き、魅力を高める企業
先進的企業、例えばアップル、アディダス、スターバックスなどは、それぞれの伝統を重んじる一方で、常に独自の美意識を磨き、製品の魅力、製品への憧れを高める努力を欠かさない。
こうした企業は、競合と類似した製品を持つ。例えば、アップルのスマートフォンは、サムスンのそれと同等の処理能力を持つ。また、エアビーアンドビーとマリオットは、個人旅行者向けの宿泊サービスを競り合いながら提供している。
だが、美意識には違いがある。だからこそ、新製品に1000ドル以上もつぎ込むために、iPhoneの顧客は嬉々として長蛇の列をつくる。エアビーアンドビーが、世界最大規模のホテルグループを追い抜き、バケーションレンタル(オーナーが使用しない期間に別荘・部屋を貸し出すサービス)市場をリードしているのは、美意識を持ったビジネススタイルを実現しているからこそだ。
エアビーアンドビーでの予約は直感的に行えて、楽しい。ウェブサイトは見やすく、洗練されていて、機能面もわかりやすい。さらに重要なのは、人に夢を与えるように構築されていることだ。
「存在価値を得る」ために不可欠なもの
物があふれている今の時代、消費者はもはや物欲に駆られることはなく、「意味や意義のあるもの」を求めている。だからこそ、永続していくブランドは、意味や意義のあるものを提供し、感性に訴えかけ、想像力をかき立てようとするのだ。