2022年8月号掲載
世界は悪ガキを求めている 新時代を勝ち抜く人の思考/行動/キャリア
著者紹介
概要
激変の時代の到来により、理想のリーダー像が変わりつつある。「勤勉な人格者」よりも「悪ガキ」が求められるようになったのだ。時に周囲の迷惑を顧みず、夢の実現に邁進する悪ガキリーダーたち。彼らの思考や行動から導き出した新しい「一流」の条件を、人材組織コンサルティング会社コーン・フェリーの元日本代表が解説する。
要約
激変の時代におけるリーダー像
私は30年以上、ヘッドハンターの仕事を続けてきた。人を見る目を養い、最高の人材を見つけ出し、クライアント企業を発展させる。それを目指して研究し、提案し続けた。そんな自信がある。
「求められる人材」の激変
そのような中、21世紀に入った頃から、私が理想と思う経営者像と現実が乖離し始めた。
それまでは、頭脳明晰で勤勉、そして並外れた才能と高い人格を持っている、そんな人物が理想の経営者像だった。典型的な例では、松下幸之助氏、盛田昭夫氏、稲盛和夫氏のようなお歴々だ。
それが、2000年代に入った頃から、これと真逆な人材が成功を収めるようになってきた。例えば、アップルのスティーブ・ジョブズ、フェイスブック(現メタ)のマーク・ザッカーバーグ…。日本で言えば、孫正義氏、柳井正氏などだ。
彼らは自分が好きなことを好き勝手に追求し、そのために時として周囲の迷惑をも顧みず、場合によってはルールをねじ曲げてでも自分の夢の実現に邁進する。服装や髪型には無頓着で、周りから変わり者と思われてもまったく意に介さない。いわば「悪ガキ」と言えるようなキャラだ。
激変の時代にこそ「悪ガキ」が必要とされる
世界が求めるリーダー像は、なぜこれほど変わったのか。それは、現代社会がまったく先を見通せない「激変の時代」になったからだ。いま世界は未曽有の変化の時代に突入しており、これまでの常識すべてに疑いの目を向けねばならない。
狩猟採集生活から、食物を自分たちの知恵と力でコントロールすることに成功した「農業革命」。小規模手工業を近代的大規模工業へと進化させた「産業革命」。情報ネットワークの創造による「情報革命」。いま起きているのは、これら3大革命に続く、未知の「第4の革命」だ。
これまで200~300年かけて変化してきたことが、数年で様変わりする。それが「いま」なのだ。
第3の革命である「情報革命」の身近な例に、スマートフォンがある。スマホは、私たちの生活様式や行動パターンを大きく変えた。
例えば音楽。その昔、音楽を聴こうとしたら、レコードやCDなどモノを所有することが前提だった。ところが、いまの主流は、定額制のストリーミングサービスだ。もはやそこには、音楽を「所有する」という概念はない。
このような変化は、それが起きた後の時代から見れば「当然のこと」と映る。しかしそれは「後知恵」なのだ。我々がすべきことは、できるだけ正確に未来を予測すること。この未来予想こそが私たちを成功に導き、豊かにさせるのだ。