2023年9月号掲載
人口亡国 移民で生まれ変わるニッポン
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年6月30日
- 定価935円
- ページ数254ページ
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著者紹介
概要
人口減少に歯止めがかからない日本。これを食い止め、社会を維持するには、「移民政策」に取り組むほかない。しかし日本では、移民問題は長くタブー視され続けてきた。なぜか? 多文化共生の事業に携わる著者が、その背景にあるものを示すとともに、外国人受入れの効果や、日本にとって今後必要なことなどを詳しく論じる。
要約
人口減危機と移民問題
日本では、国の未来に最も大きな影響を与える課題に対して、危機感が薄まっている。その危機とは「人口問題」に他ならない。
30年後に残るのは本州だけ
国立社会保障・人口問題研究所の予測では、日本の人口は2056年には9965万人と1億人を割り込む。それはつまり、九州、北海道、四国に住む人の合計に近い2500万人もの人口減少が、これから30年強の間に起こるということだ。
これまで政府、自治体は考えうるすべての少子化対策を行ってきた。しかし、そうした努力は成功しなかった。その現実を直視すれば、日本がこれまで禁じ手として封印してきた政策、「移民政策」に真正面から取り組まざるを得ない。
移民のタブー化の始まり
人口減少という危機に陥りながらも、日本では移民問題がタブー視されている。なぜか?
移民のタブー化が始まったのは2010年、対中国、対韓国関係が悪化してからである。
中国との関係でいえば、2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件、12年の同諸島の国有化以降、対中関係は一挙に悪化した。
対韓関係では、2011年8月に慰安婦問題の違憲判決、12年8月には李明博大統領が竹島に上陸する事件などが起こり、日韓関係が急速に悪化した。
本来、移民政策と隣国への感情はつながりがない。なぜなら日本が移民政策をとるならば、対象となるのは東南アジアなどの途上国であり、経済が発展した韓国や中国からの移民は想定しにくい。
しかし、そうした客観的な分析とは別に、移民の受入れは「中国人、韓国人による日本の乗っ取り」につながるとの議論が行われ始めた。その結果、移民政策は日本の国のあり方をゆがめる危険な政策との批判が高まった。
外国人の地方参政権
移民議論がタブー視されたもう1つの大きな理由は、外国人の地方参政権を巡る政治論争だ。
これまで日本では、数十年にわたり日本に在住し、「特別永住許可」を持つ在日韓国人に対しては、地方選挙で参政権を認めてもよいのでは、との議論が行われてきた。