2024年1月号掲載
新しい封建制がやってくる グローバル中流階級への警告
Original Title :THE COMING OF NEO-FEUDALISM:A Warning to the Global Middle Class (2020年刊)
著者紹介
概要
著者は言う。「封建制が帰ってきた」と。今日、脱工業経済のもと、富がごく一部の人たちに集中している。そして階級や格差が固定化し、社会的上昇の機会が失われつつある。騎士も領主も登場しないが、世界には新しい「貴族階級」と「奴隷階級」が現れるであろうと指摘。現代の社会を徹底分析し、世界の中流階級に警鐘を鳴らす。
要約
封建制の復活
「封建制」が帰ってきた。もちろん、見かけは昔のものとは違う。今日、アメリカその他の国で出現しつつあるのは、新しい形の貴族制である。
というのも、脱工業経済のもとで、富が少数者の手に集中する傾向がますます強まっているからだ。社会の階層化が進み、多くの人々にとって社会的上昇の機会が狭まりつつある。
中世ヨーロッパの封建制の構造には、いくつかの顕著な特徴がある。階層性の強い社会秩序、排他的社会階級(カースト)の永続、大多数の人々の恒久的な農奴的地位…。
中世の封建制と現代が最も似ている点は、富が少数者の手に集中していることだ。20世紀後半、先進国では中流階級の層が厚くなり、労働者階級の地位が向上するなど、繁栄の果実が広く享受された。だが今日、大半の国で経済成長の恩恵を受けているのは主に最富裕層である。
試算によると、世界人口の上位0.1%が保有する世界の富の割合は、1978年には7%だったが2012年には22%に増加。2030年には、上位1%の富裕層が世界の富の3分の2を支配するという。
また、アメリカは長らく“チャンスの国”といわれてきたが、1980年代初頭から、中流階級が所得上位層に昇る確率は約20%低下している。アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの高所得国では、持ち家率が低迷・急落している。
経済のグローバリゼーションで恩恵を受けたのは上流階級で、その他大勢にはほとんど恩恵が及ばなかった。例えば、中国への生産シフトだけで、かつての工業大国イギリスから50万人以上の製造業の雇用が失われ、アメリカからは340万人の雇用が失われたと推定されている。
富は世代を超えて受け継がれ、貴族階級のようなものを形成する。貴族は、その富によって政治的・文化的影響力を獲得する。
かくして、民主主義国といわれる国で、強力な中央集権政府に新しい封建的貴族制を接ぎ木した寡頭制が出現しているのである。
ハイテク封建制
かつてテクノロジーの進歩は、多くの人々に経済的豊かさをもたらす原動力であった。資本主義と新しいテクノロジーは、ともに物質的豊かさの向上を広く行き渡らせ、社会的流動性を高めるための基礎を築いたのである。