2024年3月号掲載
未婚と少子化 この国で子どもを産みにくい理由
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年12月28日
- 定価1,122円
- ページ数179ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
「少子化」が止まらない日本。政府は対策を講じているが、実を結んでいない。なぜか? 著者は、「少子化にまつわる誤解」が世間に浸透していることを理由の1つに挙げる。“少子化対策=子育て支援”とだけ考えるのは、その最たるものだ。こうした誤解を、各種データを基に検証。少子化対策を前に進めるための知識を提供する。
要約
少子化の何が問題か
少子化は、日本が取り組むべき最大の問題の1つである。しかし、いくつかの誤った、あるいはミスリーディングな認識がある。そのため、これまでの少子化対策には原因の認識を含めて、問題・課題が多い。
肝心なのは、様々なデータや実情を総合的に見た上で、バランスの取れた方向性を探ることだ。
少子化問題を整理する
少子化問題に関連する概念や数値には様々なものがある。少子化に関連する数値として、日本では合計特殊出生率(女性が一生のうちに何人出産するのかの数値)が使われることが多い。その他には、出生数、人口規模、人口構成などがある。
ここではまず、「規模」と「構成」の違い、あるいはそれらの関係について考えてみよう。
シンプルに言えば、出生率が人口置換水準(社会全体の人口を維持するだけの出生率の水準。先進国では2.07くらい)を下回る状態が続けば、人口構成(年齢構造)は高齢化し、人口規模も長期的に縮小に向かう。学術的な文脈で「少子化」と言う場合、このように出生率が人口置換水準を下回る状態を言うことが多い。
この観点から言えば、ほとんどの先進国は「少子化」の状態にある。というのは、イスラエルを除いてOECD(経済協力開発機構)加盟国の出生率は人口置換水準を下回っているからである。
また、加盟国で日本より人口が多いのはアメリカとメキシコのみ。であれば、「日本はほとんどの経済先進国より人口が多いから、もっと人口が減っても大丈夫」と考える人もいるかもしれない。
ただ、専門家の間でそう考えている人はそれほどいない。というのは、少子化で最も懸念されるのは、人口規模ではなく人口構成だからだ。
極端な話、たとえ日本の人口が10億人であっても、少子化のために人口構成が歪むことは避けるべきだと考える人が多いはずだ。なぜなら、人口構成が歪むと ―― つまり急激な出生率低下によって高齢化率が高くなると ―― 高齢者を支えるための政府の社会保障支出が増え、経済成長にもマイナスの圧力がかかるからである。
出生数も人口も減ることはほぼ確定
人口構成と人口規模以外に、出生数も重要な数値である。出生率と出生数の2つは密接に関連する数字だが、同じものではない。出生率を算定する際は、ある年の15~49歳の女性の人口を分母にし、その年の出生数を分子にする。
出生率の計算では15~49歳の女性の人口を用いるが、実際には出産の多くは女性が20代か30代前半(20~34歳)の間で生じる。この年齢帯の女性人口は1920~70年代は一貫して上昇してきた。しかし、1970年代後半~1990年代前半は20~34歳の女性の数が減り、出生率も低下したため、出生数が減少した。