2024年5月号掲載
Invention and Innovation (インベンション・アンド・イノベーション) ――歴史に学ぶ「未来」のつくり方
Original Title :INVENTION AND INNOVATION:A Brief History of Hype and Failure (2023年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年3月30日
- 定価1,980円
- ページ数285ページ
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著者紹介
概要
電気自動車、人工知能(AI)、メタバース…。新発明の数々を、メディアは「世界を一変させる」ともてはやす。しかし、「発明(インベンション)」=「イノベーション」にあらず。歴史を辿れば、失敗に終わった発明も多い、と世界屈指の思想家は言う。本書では、「失敗したテクノロジー」を具体例を挙げて検証。ニュースが報じない事実を語る。
要約
失敗したイノベーション
人類の進化は、様々な発明(インベンション)の成果と密接に結びついている。斧や銛など、単純なつくりの「手製の道具」、時計やミシンなどの「機械」、アルミやプラスチックなどの「新素材」…。
そして現代の発明も、私たちが技術、環境、社会において直面しているあらゆる問題を解決する輝かしい救済になるという使命を帯びている。
しかし、それは可能なのか?
現代文明を築いた発明の中には大成功を収めたものもあるが、うまくいかなかったものも多い。こうした「失敗したイノベーション」は、大きく次の3つのカテゴリーに分けることができる。
①歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明
実現した時には賞賛され、商用化されたが、数十年後、結局は望ましくなく、人間にも環境にも極めて有害であるという証拠が挙がるようになり、ついには当初の目的での使用が禁止された発明。
例えば、有鉛ガソリンの導入によって車が「ノッキング」(エンジンの異常燃焼による不具合)を起こしにくくなったが、数十年の歳月を経て、排出ガスの中に神経障害の原因となる重金属が含まれていることが判明し、多くの国が有鉛ガソリンの使用を禁止するようになった。
②主流となるはずだったのに、当てがはずれた発明
これは、当初は市場を独占すると予想されていたが、結局は期待外れに終わったものである。
例えば「核分裂による原子力発電」。原子炉は世界で400基以上が稼働しているが、発電の世界市場における現在のシェアは、当初の期待にはまったく届いていない。当時は、20世紀末までに原子力発電が市場を独占すると予想されていたが、2020年、世界の発電電力量における原子力発電の割合は約10%にすぎない。
さらに、1986年にはチェルノブイリ原子力発電所で、2011年には福島第一原子力発電所で事故が起こったため、核分裂反応に対する恐怖心がいっそう高まった。日本の原発事故を受け、EU最大の経済国ドイツは脱原発へと政策を転換した。
③待ちわびているのに、いまだに実現されない発明
その最たる例が、2世紀以上も前から実現化が取り沙汰されてきた「真空チューブ列車」だ。
真空チューブで人や物資を迅速に輸送するという技術は、19世紀の時点では机上の空論にすぎなかったが、新たな材料や推進力を利用できるようになり、難題は山積しているものの、最終的には達成できるはずの目標へと変化していった。