2024年12月号掲載
「組織と人数」の絶対法則 人間関係を支配する「ダンバー数」のすごい力
Original Title :THE SOCIAL BRAIN (2023年刊)
著者紹介
概要
健全な組織運営のカギは、“規模”にあり! 5人までならリーダー不要、50人ならリーダーを置き、150人ならサブリーダーなど階層化が不可欠。進化心理学の権威ロビン・ダンバーによれば、人が関係を維持できるのは「150人」まで。そんな数字に基づく科学的組織論だ。組織の規模に応じたあり方、リーダーの職責が説かれる。
要約
生物学を基盤とした社会集団
組織とは、共通の目的の下に結束していることが望ましいものの、たまたま集まっているだけのことも少なくない人々の集合体である。
たいていの組織は、特にそれが巨大である場合、人の心理が小規模な社会に対応している点に注意を払わない。だから、問題が生じがちだ。
クラスの人数を5名増やしたことで生じた問題
一例をあげよう。それは数年前に開催された、リーダーシップ・プログラムでのことだった。
プログラムは人気が高かったので、クラスの人数を40名(以前より5名多い)に増やすことにした。受講者が数名増えるだけなら、たいした違いはないだろうと考えたのだ。
残念なことに、その考えは間違っていた。クラスが小さいうちは、受講者は20カ国もの国々からやって来た初対面の人同士で、やがて同一のアイデンティティを共有するようになった。
ところがクラスが大きくなると、そうした連帯感が根づくことはなかった。受講者は、業種や出身地域の同じ人とだけ言葉を交わすようになった。交流を広められるイベントがあっても、自由に歓談するどころか近しい者同士で派閥を形成した。
要するに、プログラム開催中の社会関係と会話に支障が生じたのである。かつては強力だった同じグループに属しているという仲間意識と互いへの関与が失われた。
受講者が数名増えただけで、なぜこれほどの違いが出るのか。調査の結果、受講者はすでに一定数の人とつながっているので、これに加えて限られた時間内に大勢の人と新たに関係を結ぶには、認知負荷があまりに大きいということがわかった。
社会集団の健全さに関する3つの原則
「社会脳仮説」という考え方がある。ある動物種の脳の大きさと与えられた時間が、その種の社会集団の規模を決定するという考えである。
ヒトの場合には、自然な状況における最大規模は150人である。ヒトは他者とのつながりを求める性質が遺伝子に組み込まれていて、社会集団の一員でなければ生きていけない。その社会集団の健全さは次の3原則に依存する。
・第1原則
集団の規模がその集団の健全さの強力な決定要素である。人は他者を知り、他者からも知られていれば活躍する。