2024年12月号掲載
「日米合同委員会」の研究 謎の権力構造の正体に迫る
著者紹介
概要
「日米合同委員会」。これは日本のエリート官僚と在日米軍高官らが毎月行う秘密の会議だ。そこでは米軍の意向に沿った、日本の主権を侵す密約が結ばれているとされるが、内容は厚いベールに覆われている。この会議の実態、密約文書の内容に、大宅賞受賞ジャーナリストが光を当てた。真の主権回復を考える上で参考になる1冊。
要約
日米合同委員会とは何か
東京の一等地、港区南麻布に「ニューサンノー米軍センター」(通称ニュー山王ホテル)がある。米軍関係者専用の高級宿泊施設だ。
ここで毎月、日本のエリート官僚と米国の高級軍人が集う「日米合同委員会」が開かれている。
日米合同委員会の役割
日米合同委員会とは、日本における米軍の基地使用・軍事活動の特権などを定めた「日米地位協定」の具体的な運用について協議する機関である。
協議する内容は広範囲に及ぶ。例えば ――
- ・提供される米軍基地・演習場の場所の決定。
- ・滑走路や兵舎など各種施設の新設や移設の実施計画。
- ・米軍機に関する航空交通管制。
- ・オスプレイなど米軍機の訓練飛行や騒音問題。
- ・米軍関係者の犯罪の捜査や裁判権の問題。
1952年4月28日に対日講和条約、日米安保条約、日米行政協定(現地位協定)が発効したのに伴い、日米合同委員会も発足した。
日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人・米大使館の高級外交官の計13名で構成される日米合同委員会が、いわゆる本会議として位置づけられている。その下に補助機関として各種分科委員会や各種部会などが置かれている。これらを含めた全体が、日米合同委員会と総称されるものである。
米軍の軍事的要求を最優先にして協議
分科委員会や部会などには、日本側からは各省庁のエリート官僚たちが、米国側からは佐官・尉官クラスの軍人たちが、協議に参加している。
注目すべき点は、米国側は大使館公使1人を除いて、すべて軍人で占められていることである。そのため、米国側は常に軍事的観点から協議にのぞみ、軍事的必要性にもとづく要求を出してくる。米軍基地の運営や訓練をはじめ、軍事活動を円滑に行うことを最優先にしているわけである。
そして、米軍に非常に大きな特権を認める日米地位協定がある以上、日米合同委員会では、米国側の要求がほとんど通っているのが実態である。
議事録や合意文書は非公開
日米合同委員会の本会議は、1952年の発足以降、これまでに1600回以上開かれている。しかし、議事録や合意文書は、原則として公開されない。ごく一部の合意の要旨だけが、外務省ホームページなどに掲載されるだけだ。
これまでに結ばれた合意は何件あるのか。それを知るため、私は情報公開法にもとづき外務省に、日米合同委員会の合意数を記した文書の開示請求をしてみた。すると、「該当する文書は存在しない」との通知が届いた。また、議事録や合意文書の開示請求をしても、ことごとく不開示になる。