2025年4月号掲載
ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年1月20日
- 定価1,210円
- ページ数254ページ
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著者紹介
概要
近年、中国は不動産バブルが弾け、経済が低迷している。その一方、EV(電気自動車)などの新興産業は快進撃を続け、過剰生産が危惧されている。一見、この2つの問題は関連がなさそうだが、実はコインの表と裏。どちらも中国経済の性質によるものだ。それは何か? 中国をよく知る経済学者とジャーナリストが明らかにする。
要約
新型都市化と不動産リスク
中国経済の理解は一筋縄ではいかない。マクロの経済状況に注目すると悪化が目につくが、一部の新興産業の快進撃という明るいニュースもある。
中国経済の現状は暗いのか、明るいのか ―― 。
不動産危機の背景
中国の不動産市場が危機に直面している。例えば、商品住宅販売額は2021年の15兆元をピークに急落し、2023年は10兆元台に縮小している。
不動産危機の背景は複雑だ。短期的には、コロナ禍に伴う経済政策の混乱によって始まったが、より長期的な問題もある。
中国には北京市や上海市、深圳市などを含む東部沿海部が経済的に発展し、内陸の中部と西部の発展は遅れているという図式がある。
習近平政権は2014年に新型都市化と呼ばれる新政策を打ち出した。大都市をさらに巨大化させるのではなく、小粒な都市を増やすという政策だ。
新型都市化で中西部の都市の住宅需要が増加するはず。そうした思惑から住宅建設が進められた。ただ、中国の新型都市化は戦略を間違えていたといえる。なぜなら、多くの人は単に「都市に住みたい」のではなく、「北京や上海のような大都市に住みたい」と考えている。先日まで畑だったド田舎に巨大マンション群を作り上げても、「なんちゃって都市」にしかならないというわけだ。
実際には人口の移動・定着が思うように進まず、さらに将来的な人口減少が予測されるにもかかわらず、住宅建設は主に中小の都市に集中してきた。
ある中国不動産取引仲介企業が2022年に発表した報告書では、主要28都市を調査した結果、田舎になればなるほど空き家が多い。そして、完成から1年未満のマンションは空き家率が30%と一番高い、という傾向が明らかとなった。
旧市街地再開発と新興ディベロッパー
新型都市化政策は中西部開発を奨励する政府の姿勢を示すものだった。これにマネーという実弾を供給したのが2015年からの旧市街地再開発だ。
旧市街地再開発では、立ち退き世帯への現金補償が中心となった。「住む場所がなく、かつ大金を持っている人々」という最強の住宅購入予備軍が生み出され、この恩恵が中西部により大きなインパクトをもたらした。