2025年4月号掲載
ニセコ化するニッポン
著者紹介
概要
近年、北海道のスキーリゾート・ニセコに、外国人富裕層が押し寄せている。1泊170万円のホテル、看板の多くが英語など、街の姿は日本とは思えない。その名を冠した「ニセコ化」とは、「選択と集中」によって、その場所が「テーマパーク」のような別世界になること。今、日本全体で起きているこの現象を、具体例とともに紹介する。
要約
「ニセコ化」とは何か
北海道・ニセコ。このスキーリゾートは、すでに多くのニュースが報じているように、ここ数年、大量の外国人観光客が押し寄せている。
2023年の外国人観光客は約160万人。ニセコ観光圏に属する3町の人口は約2万人だから、その数十倍である。ただ、数が多いだけではない。牛丼2000円、1泊170万円のホテルなど、日本人からすると、「モノが高すぎる」のだ。
こう書くと「ニセコってすごいんだなあ、でも、自分には関係ないな」と思う人がいるだろう。だが今、日本全体で「ニセコ化」が進んでいるのだ。
選択と集中によるテーマパーク化
「ニセコ化」とは何か。それは「『選択と集中』によって、その場所が『テーマパーク』のようになっていく」現象だ。
もともと、ニセコ地区では西武グループなど、日本のデベロッパーがスキー場を経営していた。しかし、スキーブームの終焉や景気低迷の煽りを受け、これらは撤退してしまう。そこに目を付けたのが外国資本のホテルだ。2000年代半ば頃から、外国資本のホテルがニセコに建ち始めた。
しかし、ただ外国資本のホテルが増えるだけでは、その魅力は上がらない。その時、外資のホテルが意識的に行ったのが「選択と集中」である。
ニセコにおける「選択」と「集中」
「選択」とは、その場所に来る人々を「選ぶ」こと。ニセコの場合、ターゲットは明確に、「富裕層の外国人観光客」である。ニセコにあるホテルの名前を見ると、パークハイアットやリッツ・カールトンなど、高級ホテルがずらりと並ぶ。
そして「集中」である。ニセコでは、「選択」されてやって来た富裕層が満足できるように、彼らに深く刺さるサービスを「集中」的に行う。
例えば、ニセコには至るところに外国語の看板が立ち、コンビニでは1万3000円を超える高級シャンパンが売っている。とにかく外国人富裕層にとって居心地の良い、そして便利な場所にするための空間作りが行われているのだ。
テーマパーク化する場所
では、「選択と集中」の結果、ニセコはどんな姿になったのか。「テーマパーク」のような姿だ。
ニセコの街を見ていると、「まるで日本ではない場所」に思えてくる。外国語の看板に外国資本のホテル。誰もそこを「日本」と思わないだろう。