2025年4月号掲載
なぜ悪人が上に立つのか 人間社会の不都合な権力構造
Original Title :CORRUPTIBLE:WHO GETS POWER AND HOW IT CHANGES US (2021年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年11月5日
- 定価2,420円
- ページ数405ページ
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著者紹介
概要
平気で嘘をつく、人を騙す、違法行為を繰り返す…。私たちは、そんな“悪人”をリーダーに選びがちだ。なぜそうなるのか? 権力は人をどのように変えるのか? 気鋭の国際政治学者が、進化論や人類学、心理学の研究結果を読み解き、これらの疑問について考察。権力が腐敗する要因を、様々な事例とともに提示する。
要約
なぜ、リーダーは男なのか?
アメリカの大企業の上位500社のうち、468社が男性によって経営されている。つまり、女性が経営する企業はたった6%ほどなのだ。
また、国連の193の加盟国のうち、女性が国家指導者なのは、わずか16カ国(8%)だ。
脳は男性をリーダーに選びがち
ある実験でも、女性に対する偏見があった。
10年前、名門大学の科学者たちが研究室管理者の職に応募した学生たちを評価するように依頼された。科学者らは履歴書を基に採点し、技能や経験に基づいて初任給を提案する必要があった。
応募者の資質は様々で、この仕事にふさわしい人も、ふさわしくない人もいた。だが、実は履歴書の名前には細工がされていた。
履歴書には、男性と女性の名前のリストからランダムに選んだ名前が書かれていた。名前は評価には関係がないはずだ。だが、科学者たちは一貫して男性の応募者を高く採点した。評価をしているのが男性であろうと女性であろうと違いはなかった。彼らは全員、女性に対する偏見を示した。
なぜ、こうしたバイアスは生じるのか?
有史以前の時代までさかのぼる、私たちの脳の進化の欠陥が一因、というのがその答えだ。
脳の「進化のミスマッチ」
過去数百万年の間に、人間の脳はどんどん大きくなり、チンパンジーの脳の3倍に達した。だが、過去20万年ほどは同じ大きさを保っている。そこから進化心理学者たちは、「現代人の頭蓋骨には石器時代の心が収まっている」と結論した。
例えば昔、生き延びるために、人間の脳は糖分に対して強い肯定的な反応を示すように配線された。20万年前、糖分は果物などから得られたが、当時の果物はやたらと甘くはなかった。私たちの脳は少し甘い果物向けにできている。そして、それが手に入る時にはただちに摂取するように進化した。かつて食べ物はとても乏しかったからだ。
今日、私たちは当時存在しなかった甘い糖分を大量に摂取しており、それに伴って糖尿病が増えた。これは「進化のミスマッチ」の例であり、脳が進化した時代の生活様式が存在しなくなった結果だ。過去には糖分に対する脳の渇望に従った人の方が生き残りやすかった。だが今日、石器時代の本能に従う人は糖尿病になる可能性が高い。