2000年1月号掲載
富のピラミッド 21世紀の資本主義への展望
Original Title :BUILDING WEALTH
- 著者
- 出版社
- 発行日1999年10月29日
- 定価1,980円
- ページ数371ページ
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著者紹介
概要
21世紀は、「富が人間の価値を決める唯一の基準」となる。国家も企業も個人も、競って経済力を身につけ、「富のピラミッド」を築こうとする。では、グローバルな資本主義世界で富を得るためには、何が必要か。その競争に勝ち抜くための知恵を、MIT(マサチューセッツ工科大学)のレスター・サロー教授が説く。
要約
富が人間の価値を決める!
「富」とは、資本主義社会での成功の度合いをはかる尺度であり、いつの時代にも人々の序列を決める重要な要因であった。
しかし、今では「人間の価値を決める唯一の基準」となった。
それは、軍事力や政治力、名声や権威などの他の力が相対的に弱まり、逆に、経済力の価値、重要性が急速に高まっているからである。
変化の速い時代がもたらしたもの
現在、第3次産業革命が起こっている。電子、コンピュータ、通信、バイオ技術などによって、生活のあらゆる面が変容している。
また、技術の変化が極めて速く、次々に新しい事業が生まれる。この変化のスピードに追いつくために企業の合併・買収も急増し、1998年の合併・買収の総額は90年の5倍に達している。
中でも、メルセデス・ベンツがクライスラーと合併したような国際的な合併・買収が速いペースで増えており、その結果、国籍を持たない「世界企業」が次々に誕生している。
同時に、事業は「売買するもの」となった。かつて事業を売却することのなかったシーメンスのような企業でさえ、今では本業に専念するために周辺事業を売却している。
カウボーイ資本主義
また、企業は世界で最もコストの安いところで生産し、最も価格が高いところで販売できるようになった。さらに、インターネットを使えば、世界中で販売できる。
この世界経済には、強制力のあるルールがあるわけではない。違法を取り締まる保安官もいなければ、不正を裁く裁判官もいない。このため現状は、「カウボーイ資本主義」と呼ぶこともできる。世界経済は昔の“西部劇”のようなもので、力の強い者が弱い者を、経済的に肥沃な土地から砂漠へと追い出しているようなものである。
重要視される経済力
そんな世界で通用するのは“力”だけだ。そしてそれは、政治力や軍事力ではなく経済力なのだ。
国家はもはや、自国の経済さえ管理する力はない。旧ソ連やチェコスロバキアを見ればわかるが、国家も“分割”や“合併”の対象となっている。