2001年2月号掲載
失敗学のすすめ
著者紹介
概要
「失敗は成功の母」とはいうものの、実際のところ、失敗には負のイメージがつきまとい、忌み嫌われることが多い。だが、失敗から目を背けることなく、うまく付き合うことによって、次の失敗を防ぐだけでなく、失敗を基に新しい技術やアイデアを生み出すことができる。こう語る著者が「失敗学」について、事例を交えわかりやすく解説する。
要約
失敗に学べ!
1999年9月に茨城県東海村で発生したJCOの臨界事故、2000年3月の地下鉄・日比谷線の脱線事故、大きな社会問題にまで発展した同年6月の雪印乳業の食中毒事件…。
近年、従来なら考えられないような大事故が続発し、世間の耳目を驚かせている。
これらの事故に対し、「日本の技術基盤が崩れかかっている」と指摘する声もあるが、そうではない。いずれのケースも「失敗とうまく付き合うことができなかった」ことが事故原因といえる。
人の心は弱く、失敗を前にすると、誰しもつい「できれば人に知られたくない」と考える。しかし、失敗を隠すことによって起きるのは次のさらなる大きな失敗でしかない。
失敗から目をそらす結果、致命的な事故が繰り返し発生するのだとすれば、失敗に対する見方そのものを変える必要がある。
また、「失敗は成功のもと」という言葉があるにもかかわらず、今の日本の教育現場を見ると、その考え方がほとんど反映されていない。
そこで重視されているのは、決められた設問への解答を最短で出す方法、「失敗しない」ことを学ぶ方法ばかりである。失敗経験を通じて新たな道を模索し、創造力を培う機会はほとんどない。
このことが、日本人の欠点であるとして内外から指摘される「創造力の欠如」をもたらしているのではないだろうか。
失敗は確かにマイナスの結果をもたらすが、その一方、失敗を上手に生かせば、将来それをプラスの方向に転じることも可能だ。
大切なのは、失敗の法則性を理解し、失敗の要因を知り、失敗が致命的なものになる前に、未然に防ぐ術を覚えることである。
今後も失敗、事故がなくなることはない。そうであれば、失敗を避けるだけでは意味がなく、むしろ失敗と上手に付き合う方法を見つけていくべきである。すなわち、「失敗学」の実践が不可欠なのである。