2002年3月号掲載
マネジメント【エッセンシャル版】 基本と原則
Original Title :MANAGEMENT:TASKS, RESPONSIBILITIES, PRACTICES
著者紹介
概要
ドラッカー経営学の集大成、『マネジメント』から重要な部分を抜粋して紹介する。「マネジメントには基本とすべきもの、原則とすべきものがある」「基本と原則に反するものは、例外なく時を経ず破綻する」。こう語る著者が、マネジメントの課題と責任と実践に関わる基本と原則を、総合的に解説。時代を超えて踏まえるべきマネジメントの要諦が示される。
要約
企業とは何か
企業とは何か? それを知るためには、企業の目的から考えなければならない。
企業の目的の定義は1つしかない。それは、「顧客を創造すること」である。
この顧客が、企業とは何かを決める。なぜなら顧客だけが、財やサービスに対する支払いの意志を持ち、モノを財貨に変えるからである。
今述べた通り、企業の目的は、顧客の創造だ。従って、企業は2つの基本的な機能を持つ。それが、マーケティングとイノベーションである。
マーケティング:顧客の欲求からスタートする
企業の第1の機能としてのマーケティングは、今日あまりにも多くの企業で行われていない。
これまでマーケティングは、販売に関係する全職能の遂行を意味するにすぎなかった。それでは、まだ販売である。「我々の製品」からスタートしている。「我々の市場」を探している。
これに対し、真のマーケティングは顧客からスタートする。「我々は何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「我々の製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。
実のところ、販売とマーケティングは逆である。
マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、自ずから売れるようにすることである。
イノベーション:新しい満足を生み出す
企業の第2の機能は、イノベーション、すなわち新しい満足を生み出すことである。
経済的な財とサービスを供給するだけでなく、より良く、より経済的な財とサービスを供給しなければならない。企業そのものは、より大きくなる必要はないが、常により良くならねばならない。