2002年5月号掲載
本業再強化の戦略
Original Title :PROFIT FROM THE CORE
著者紹介
概要
企業が長期にわたって利益を確保し、持続的に成長する ―― 。全ての経営者の願い、そして悩みの種でもあるだろう、この命題に対する実践的な戦略を、本書は説く。800社以上もの企業を分析した著者は、「コア事業」を明確に定義し、その成長余地を追求することが最も重要であると指摘。コア事業の定義の仕方、周辺領域へのアプローチ法などを、事例を交えて具体的に示す。
要約
コア事業を明確に定義する
どのようにして企業を成長させていくか。これは全ての経営陣にとって、最も重要な問題である。
それがいかに難しいかを示す事例の1つに、ボシュロムのケースがある。
1853年に視覚関連事業を立ち上げた同社は、以後120年以上にわたって成長し、眼科器具・レンズ事業分野におけるトップ企業となった。
そして1970年代半ばには、当時販売されていたコンタクトレンズよりも使い心地の良いレンズを、低コストで製造できるようになった。その結果、ボシュロムのコンタクトレンズ市場におけるシェアは40%に達した。
だがその後、競合他社も低コストの製造技術を導入し、ボシュロムの地位を揺るがし始めた。
すると同社は、コア事業への注力を弱め、電動歯ブラシや補聴器など、コア事業であるレンズ事業とは何ら関係のない商品への投資を始めた。
その結果、レンズ事業のシェアは16%まで低下した。同社はこの状況を脱しようと、激しい価格競争で対抗したがうまくいかず、その後、経営陣を刷新することを余儀なくされた ―― 。
こうしたケースは数多い。多くの企業が、安易にコア事業を放棄したり、コア事業の成長余地を過小評価したり、あるいは過剰な事業拡大を行い、それまで強かったコア事業の勢いを弱めてしまっているのである。
「内部の視点」に基づいてコア事業を定義する
ボシュロムのような失敗をしない、すなわち、持続的な「利益を伴う成長」をするためには、自社のコア事業を明確に定義する必要がある。
事業は、2つの視点から定義できる。
1つは、外部からの視点による定義。もう1つは、内部の視点、すなわち、その企業独自のコアの事業領域に基づく定義だ。