2003年1月号掲載
「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む 鈴木敏文の「統計心理学」
著者紹介
概要
セブン‐イレブンの総帥、鈴木敏文会長の経営学の核心を解き明かす。「今は『多様化の時代』ではなく、『画一化の時代』だ」「現場主義には『本当のようなウソ』がある」など、氏の、独自の発想法と思考法が「55の金言」を中心にまとめられている。いずれもビジネスの最も根本的な部分に関わるもので、幅広く応用できる。
要約
発想の根本にある「5つの視点」
不況下にあっても抜群の競争力を発揮し続けているセブン‐イレブン。1店舗当たりの平均日販は66万1000円と、他の大手コンビニエンスストアチェーン7社の平均を19万円も上回る(2002年2月期)。
その強さの秘密は、創業以来30年にわたって同社を率いてきた鈴木敏文会長(イトーヨーカ堂社長を兼任)の経営学にある。なぜならセブン‐イレブンは、氏の発想や考え方をコンビニ店という形で表現したものにほかならないからだ。
では、鈴木流経営学のどこが強いのか?
その最大の特徴は、一貫して「お客にとっての当たり前」にこだわり続けてきたことにある。この点をシンプルに説き続けるのが、鈴木敏文という経営者なのである。その発想法や思考法は、我々のビジネスに広く応用ができる。
ここに、鈴木氏へのインタビューで得た「金言」の数々がある。我々はこの希代の経営者の言葉に耳を傾け、多くのことを学ぶべきである。
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鈴木氏に突っ込んで聞いてみてわかったのは、氏は、「客観」と「直観」という2つの「カン」で発想するということだった。そして、その根本には、次の「5つの視点」がある。
①変化の流れを「時間軸」で捉えると、今の時代の動きがわかる
金言:売れないのは不景気のせいではない。
鈴木氏は言う ―― 「過去10年を振り返って歴史的に見れば、個人消費の落ち込みが構造的なもので、ただの景気循環とは違うことがわかる。そこに気づくかどうかで、打つ手が全く違ってくる」。
ユニクロの低迷にしても、氏の「時間軸」で通観すると次のようになる。
「このところ落ちてきたからといって、なぜ大騒ぎするのか。人間の身長だって、伸びるのが止まったからといって、その人が死ぬわけではない。ユニクロといえども、次々と新商品を投入し続けなければならない段階に入ったということだ」