2005年8月号掲載
東欧チャンス
著者紹介
概要
脱・中国!―― 今年に入って、急速に現実味を帯びだした認識ではないか。無論、これまでから中国進出に対しての警告は数多くあったが、大勢としては「みんなで渡れば怖くない」と、大挙して進出。だが、地球儀をじっくり眺めてみると、魅力的な国は中国、あるいはインドだけではないことがわかる。東欧の、可能性に満ちた“今”をレポートする。
要約
なぜ今、中・東欧が注目されるのか
2004年5月、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、エストニア、リトアニア、ラトビア、マルタ、キプロスの10カ国がEUに加盟し、EUは25カ国体制となった。
世を挙げての中国進出ブームが続いているが、これら新規EU加盟国には、中国と比べて競争力の高い部分がいくつもある。
EU加盟国間での関税の撤廃、割安な賃金コスト、教育レベルの高い労働力…。こうしたメリットに着目して、日系企業を含め、多数の世界企業が進出している。EU市場向け生産拠点として、また欧州企業のバックオフィスを担うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)拠点として、様々な活用を試みているのである。
「中・東欧諸国」とはどこか?
冷戦時、ヨーロッパは「鉄のカーテン」によって東西に分断されていた。その鉄のカーテンの東側、ソ連の社会主義ブロックの中に入っていた東ドイツ、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニアなどが東欧諸国と呼ばれていた。
これらの国々では1989年以降、相次いで共産党政権が崩壊し、市場経済化の道を歩み始めた。それに伴い、東欧という概念も大きく変わった。
旧東欧諸国のうち、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーは、一部で「中欧」と呼び変えられるようになった。
その北側、バルト海沿岸に位置するエストニア、ラトビア、リトアニアの3国は、91年にソ連から独立、今では「バルト3国」と呼ばれている。
ルーマニア、ブルガリア、旧ユーゴスラビア諸国(スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、セルビア・モンテネグロ)などバルカン地域の国々は、「南東欧」または「南欧」と呼ばれている。
旧来の意味での東欧と捉えられているのは、ウクライナやベラルーシ、グルジア、モルドバなど、いまだロシアの影響力が強い国々のみだ。
このあたりの呼称は様々あるが、ここでは、バルト3国および中欧4カ国、スロベニアを総称して「中・東欧諸国」とする。
この中・東欧諸国は、それぞれエリアごとに異なる特徴を持つ。