2006年3月号掲載
米中石油戦争がはじまった アメリカを知らない中国は敗れる
著者紹介
概要
中国は、勝つことのできない戦いを始めてしまった ―― 。拡大を続ける中国経済。その成長とともに石油の消費量も急増しているため、中国は世界中の産油国に手を伸ばしつつある。さらに、莫大なドルを保有する中国は、国際基軸通貨のドルにも挑戦を始めている。だがそれは、米国の国益と真正面から衝突する。米国の国民性を考えれば、黙っているはずがない!
要約
石油戦略で米中が激突する!
中国は、米国の国益の基本に関わる石油の利権を奪おうと、今、世界中で活発な動きを始めている。この“米中石油戦争”は、国家のあらゆる力を使っての駆け引きであり、闘争である —— 。
中国は米国の敵性国家になった
2005年、米議会では上下両院が合同で作る特別委員会が、中国に関する特別公聴会を開いた。この公聴会が開かれた背景には、中国のCNOOC(中国海洋石油総公司)による米国の石油企業ウノカル買収の動きがあった。米議会はこの動きを、米国のエネルギー政策への挑戦と受け取ったのだ。
米政府の基本的な姿勢は「中国は米国の利益に挑戦する力はない」というものだった。だが現実には、中国は海軍力を強化し、核戦力を整備し、宇宙兵器まで持つようになっている。米国に対抗する立場を作り上げつつあるのは明らかだった。
公聴会で証言した専門家の意見は、次のようにまとめられる。
- ・中国が海軍力や核戦力を強化しているのは、将来起きる石油危機に備えて、米国と対決しても石油を確保したいと考えているからである。
- ・中国は新しい世界の大国としてエネルギーを確保し、やがて米国と対立する可能性が強い。
こうして公聴会は、中国を敵性国家と見なし、同国の姿を明確に米国民に示したのである。
中国は2025年、石油危機を起こす
世界の石油の消費高は、最近になって急増している。こうした消費量の増加は米国が中心で、中国がそれに続いている。
中国は04年、世界第2の石油消費国になった。GDPはあと5年で倍増するとされ、その場合、石油消費量も今の2倍、1日1400万バーレルになる。
さらに楽観的な見方によれば、中国経済は25年までに4倍になる。つまり、今の中国が4つできることになり、石油消費量は2800万バーレル、米国にほぼ匹敵することになる。
米国が中国を敵と見なす最大の理由はここにある。中国の石油消費量が米国と同じになれば、中国は米国と同等の石油獲得戦争を世界的に展開しなければならない。
中国のエネルギー源は基本的に石炭である。だが、石炭の公害を排除する技術の開発が遅れているため、このまま使い続けることは難しい。
しかも中国は、天然ガスを効率よく使う技術も遅れている。つまり、石油に頼らざるを得ない。