2006年8月号掲載
粉飾資本主義 エンロンとライブドア
著者紹介
概要
エンロン事件とライブドア事件。この2つの事件は、「金が全て」という、現在の米国と日本の社会現象を象徴している。では、なぜ「金万能主義」が横行するようになったのか? 事件は何を意味しているのか? この問いに対し、本書は「株式会社のあり方の問題」という面から切り込む。実は拝金主義の横行は、株式会社が危機に陥っていることの現れなのだ!
要約
エンロン、ライブドア事件
2001年12月2日、巨大企業エンロンが倒産し、世界中に大きなショックを与えた。
そして、06年1月、粉飾決算などの疑いで、ケネス・レイ前会長らに対する裁判がようやく始まった。倒産から4年以上もたって裁判が始まるというのは、いかにこの事件の衝撃が大きかったか、ということの現れでもある。
ブッシュ大統領と親しい関係にあったといわれるレイ前会長の罪状が明らかになれば、ブッシュ政権の屋台骨を揺るがせかねないと、人々は不安と興味を持ってこの裁判を見つめている。
その06年1月、日本ではライブドアの堀江貴文社長(当時)ら幹部が証券取引法違反容疑で逮捕された。マスメディアはこれを大きく報道し、外国の新聞やテレビもこれを伝えた。
エンロンとライブドア、いずれも経済界に与えたショックは大きく、それは株式会社の危機を告げる事件であった。
両社は不正会計の手口や株式交換による合併の手法だけが似ているのではない。株式会社のあり方という、根本に関わる問題で共通しているところがある。
エンロンは新興資本とはいえ、米国で売上高第7位という巨大企業である。これに対し、ライブドアは若者たちが作った小さな企業であり、いわゆるエスタブリッシュメントではない。
しかし、株式市場をフルに使って急速にのし上がった企業として、日本の株式会社のあり方の一面を代表し、それを象徴しているといえる。
ホリエモンとは、一言で言えば「壊し屋」であった。既成の大企業体制の隙間を突いて、それを壊していくことで儲けた。新しい企業を作っていったのではなく、色々な会社を買収し、その際の株の操作で儲けただけである。
その壊し屋としての面がはっきり出たのが、ニッポン放送株の買占めにおいてであった。それは、株を買占めて会社側に引き取らせるという、戦後日本で流行った「日本的買占め」だった。
かつて日本的買占めが横行していた時は、安定株主工作が進んでおり、上場会社の株式の過半数は安定株主としての法人にはまっていたため、会社は乗っ取りの恐れはなかった。