2006年12月号掲載
マネジメント革命 「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ
著者紹介
概要
ソニーの元役員が、井深大氏などの優れた経営者のマネジメント・スタイルを分析した上で、新しい経営論として「長老型マネジメント」を提示する。部下に指示・命令するのではなく、部下が全力疾走できるようにすることで、運をも味方につける「燃える集団」が実現できるという。成果主義の綻びが目立つ今、大きなヒントを与えてくれる日本発のマネジメント論。
要約
合理主義経営は空論だった!
どんな企業でも、マネジメント教育には力を入れ、マネジメントの選抜には慎重を期している。
それなのに、部下から見て優秀な上司というのはめったに出現しない。そのほとんどが、部下としては極めて優秀だったにもかかわらず…だ。
今日のマネジメントの選抜や教育のシステムが有効に働いていないのは、それらのシステムが、「組織や人間は合理的な存在だ」という前提のもとに作られているからである。
これは大きな錯覚だ。
多くの人が、組織や人間は本来合理的に動くはずだと、頭では考えている。しかし、その実態はさっぱり合理的でないことは、誰でも心の奥底で把握している。
企業経営や人事のシステムでは、この合理的ではないはみ出した部分を、あたかも存在しないかのごとく考え、無視していることが多い。
これは間違いである。人間でも組織でも、合理性からはみ出した部分は、合理的な部分に比べて、はるかに大きく、大切で、本質的だ。それを無視した企業経営は、欠陥商品といわざるを得ない。
今まで、その欠陥商品でも何とかやってこられたのは、従業員たちがその欠陥を、人間的な包容力で補ってきたからだ。タテマエとホンネをうまく使い分け、うやむやにごまかしてきたからだ。
だから、管理を強化し、近代的で精密な経営手法を導入すると、企業がおかしくなる。ごまかしが利かなくなってしまうのである。
そういう企業には、飲み屋で憂さ晴らしをしながらでも、上司の欠点をカバーしてくれる優秀な部下はいない。身体を張って泥をかぶる人はいなくなり、皆が責任逃れに終始する。
バブル崩壊以後、日本の多くの企業が、成果主義をはじめとする米国流の近代的な合理主義経営手法を導入した。これらの手法を導入することにより、企業は活性化すると信じられていた。