2007年2月号掲載

英国のバランス 日本の傾斜

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著者紹介

概要

同じ島国だが、日本と英国は大きく異なる。バランス感覚をもって欧米の掛け橋を目指す英国。世論が偏りがちでアジアで孤立しつつある日本。在英16年の著者が、両国の違いを浮き彫りにする中で、日本の課題を明らかにする。それは一言で言えば、“バランス感覚のなさ”だ。とかく米国一辺倒になりがちな日本人に、新たな視点をもたらしてくれる1冊である。

要約

変わりゆくイギリス

 「同じ島国だから、日本と英国は似ている」。そう思われがちだが、今、日英両国は共通点よりも相違点の方が際立っている。例えば ——

新しい市民を受け入れる

 この10年ほどの間、英国で最も変化したことは移民の急増だろう。

 基本的に、英国は「来る者は拒まず」の方針を取り、自国のあり方を「多民族の共生社会」と位置づけている。これは、日本と大きく異なる点だ。

 英国で、EU(欧州連合)圏以外の国から来た外国人が働くには労働ビザを取得する必要があるが、労働ビザで4年連続して働けば永住ビザが取得できる。そしてさらに5年暮らせば、誰でも市民権を申請できる。市民権を取得するとはすなわち、英国の国籍を取得するということである。

 労働力の確保という面はあるが、それだけで移民を受け入れ、市民権を与えているのではない。そこには、英国の根本的な性格が反映されている。

 それを簡潔に表現すれば、「外に向かって開かれている」ということだ。外に開かれているということは、外に出て行くだけでなく、外から入って来るものも寛大に受け入れるということである。

 例えば、英国の障害者に対する高度な福祉制度は、外国人にも平等に適用される。

 この開放性と寛容さは、英国人が持つ“公平さ(フェアネス)”というバランス感覚の反映であり、英国の特徴の1つとなっている。

開かれている英国市場

 かねて「ユーロに参加しないと英国から投資が逃げる」と危惧されていたが、現実は逆に外国から資金が流入している。それは、英国が外国企業に向けて開かれた国だからに他ならない。

 英国には外国資本に対する制限がほとんどない。国内企業と同条件で競わせるのが基本方針だ。

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