2007年4月号掲載
その「記者会見」間違ってます! 「危機管理広報」の実際
著者紹介
概要
企業の不祥事や事故が続き、トップによる謝罪会見が後を絶たない。世間に対し、企業の体質が最もあからさまになるのは、そうした不祥事が発覚した時だ。そして、その対応いかんでは“命取り”の事態を招く。本書は、そうならないための「危機管理広報」を紹介するもの。企業法務を扱う弁護士が、平時に準備すべきことから緊急の対応まで、具体的な対処法を説く。
要約
「危機管理広報」8つのポイント
欠陥商品、工場事故、社内不正…。企業は、様々なリスクに囲まれている。
こうしたリスクが現実のものとなった時、世間の眼は一斉に企業の対応ぶりに向けられる。マスコミもここぞとばかり、企業の対応姿勢を報じる。
ところが、その際の対応がまずく、世間の反感を買い、企業ダメージが倍加する例が少なくない。
では、危機管理広報では、何に気をつければよいのか? そのポイントは、次の8つである。
①世間の「反感」は企業の致命傷!
1990年、尼崎市のスーパーで火災が発生し、15名焼死という痛ましい事故となった。
記者会見で会社のトップは、「当店の床面積は5100m²であり、スプリンクラーの設置義務の対象とはならないので設置していなかった」と述べた。消防法に違反していないことを釈明したのだ。
しかし、このコメントを聞いた報道陣は、一瞬にして態度を硬化させた。“多くの人が亡くなっているのに、法令違反がなかったことを強調する企業姿勢は理解できない”と受け止めたのだ。
その結果、「設備に落ち度なし、強調 社長会見」といった新聞の見出しとなった。
その後、階段や踊り場の防火扉の前に商品が積んであったのは倉庫代を節約するためだったなど、マスコミの糾弾報道が繰り広げられ、こうした一連の報道により、消費者の反感を買ってしまった。
このように、世間の「反感」を買ってはいけない。なぜなら、第1に、消費者の反発を招き、商品離れから、場合によってはボイコットにまで発展し、企業実績を直撃するからだ。
第2に、今の行政は世論を極めて重視するスタンスを取っており、社会的な批判を浴びた企業に対しては厳しい態度で行政権を行使する。