2007年5月号掲載
感動する脳
著者紹介
概要
気鋭の科学者が、最新の研究成果を元に、脳と心の関係について、わかりやすく解説する。「意欲が脳を活性化させる」「感動が脳を進化させる」「何歳になっても脳は成長する」など、従来は精神論で済まされていた事柄にも、実は科学的根拠があったことに驚かされる。前向きな気持ちや感動する心の大切さを、改めて脳科学の見地から教えてくれる1冊。
要約
「感動」は脳を進化させる
「感動することをやめた人は、生きていないのと同じことである」
これは、天才科学者アインシュタインの言葉だ。
人は生きていく中で、多くのものに出会う。たくさんの人たち、初めての街や風景…。そうした出会いに気づかず、新しい発見に感動することがなかったら、人は輝きを失ってしまう。それは、人間として生きていることにはならない —— 。
脳は一瞬たりとも休まない
人は生まれてからその生涯を閉じるまで、実に多くの経験を積んでいる。そして、1つ1つの体験を通して、多くのことを学んでいる。
この体験というものを脳の視点から見ると、次のようになる。
脳の中には約1000億の神経細胞があり、それらは常に活動している。この神経細胞のネットワークは、脳細胞が動く限り、学び続ける性質がある。
具体的に言えば、神経細胞をつなぐシナプスと呼ばれる構造が、その両側で神経細胞が同時に活動することで強化されていく。そういうメカニズムを通して、脳は学び続けている(ヘブの法則)。
我々は何となく、脳が休んでいる時間があると思い込んでいる。しかし実際には、脳を完全に休ませることなどできない。例えば、眠っている時でさえも、脳細胞は常に活動を続けている。
このように脳は、一生を通して自ら体験したことを次々と蓄積していくのである。
どうして年を取ると意欲がなくなるのか
「創造性」という言葉を聞くと、若者をイメージしがちだ。しかし実際には、年を重ねても創造的であり続けた人は世界にたくさんいる。
例えば、ダーウィンは50歳で『種の起源』をまとめ、ゲーテは晩年に『ファウスト』を完成させた。