2009年10月号掲載
脳地図を書き換える 大人も子どもも、脳は劇的に変わる
著者紹介
概要
脳科学の教科書を見ると、脳は、親指を動かす領域、舌を動かす領域…と、細かな領域に分かれ、各々に名前が付いている。これを「脳地図」と呼び、この“領域―役割”の関係は一生不変とされてきた。だが近年の研究により、何歳になっても訓練すれば脳地図を書き換え、能力を向上させられることがわかった。そのメカニズムと具体的な方法を、本書は解説する。
要約
大人の脳は変わる!
「大人の脳は変わらない」「脳の神経細胞は再生しない」と、脳科学の教科書に明記されてきた。だが、どちらも間違いであることが判明した。
最近、発表された多くの研究によって、脳の構造そのものが生活習慣によって変化するだけでなく、毎日、脳内で神経細胞が誕生しているという事実が明らかになった。
脳に関するこの認識の変化は、我々の生き方に根本的な変化をもたらすことになる。なぜなら、脳は我々の人生そのものであるからだ ―― 。
ADHDの少年が水泳のスーパースターに
2008年の北京オリンピックで、水泳のマイケル・フェルプス選手は出場した8種目全てで金メダルを獲得し、その快挙に世界中が熱狂した。
マイケルのコーチは、彼の最大の強みは、たぐいまれな集中力にあると言い切る。
だが意外なことに、彼は小学校3年生の時にADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されていた。
ADHDは1つのことに注意を集中できず、教室で教師の話を聞いていられないことで知られる。だが、彼はコーチの指導の下、猛練習を重ね、最も集中力の優れたアスリートへと変身を遂げた。
我々の全ての行動を実行させているのは脳だ。
かつて1つのことに集中できなかった彼だが、目標を設定し、水泳の練習に励むことによって、脳に大きな変化が起こったのである。
こうして彼は別人のごとく変わった。人が変わるとは、実は脳が変化することなのである。
脳科学では、このように脳が変化することを「脳の可塑性」と呼ぶ。