2007年10月号掲載
M&A大再編で消える会社、伸びる会社
著者紹介
概要
2007年9月、老舗デパートの大丸と松坂屋が経営統合し、売上高約1兆2000億円という国内最大の百貨店グループが誕生した。今、こうした業界再編は世界規模で行われている。その背景にあるものとは何か。そして、環境が激変する中で勝ち残っていくには何をすべきなのか。M&Aビジネスの現場に詳しい著者が、大再編の時代を分析し、生き抜く術を指南する。
要約
大再編が起きる「背景」
現在、世界中でM&Aによる企業の大再編が起きている。2006年には、インド系鉄鋼メーカーのミタルスチールが、欧州最大のアルセロールを敵対的買収で飲み込み、世界最大の鉄鋼会社となった。一方、アルミ業界では、米国のアルコアがカナダのアルキャンに敵対的買収を仕掛けた。
また、ファンドの力も強大になっている。
米国のプライベート・エクイティー・ファンドが、07年5月分だけで818億ドル(約9兆8200億円)の買収を行った、という報告もある。
この数字は、ファンドによる巨額買収が世界的な経済再編を促していることを示している。
世界的低金利がファンドへの資金流入を加速
この世界的な再編が起きている要因の1つに、物価下落やそれに伴う低金利がある。低金利が高利回りを求める資金のファンドへの流入を促し、それが企業買収に使われ再編を促すという構図だ。
投機的資金の動きを見ると、04年から06年にかけての世界の「流動性」の増加額は、約3兆ドル(360兆円)と推計されている。
その内訳は、アジア諸国、特に中国を中心とする外貨準備の増加が1.2兆ドル、原油高による産油国の収入増が1.3兆ドル、日本の低金利による「円キャリー・トレード」(低金利である円で資金調達し、それを高い利回りが期待できる外貨に換えて運用する取引手法)が5000億ドルである。
中国の貿易黒字の急増、資源高、円の低金利が、流動性の急激な増加をもたらしているのだ。
こうした流動資金の一部は、世界的な低金利の中、ファンドへ流入する。例えば、1兆ドルを超える世界最大の外貨準備高を持つ中国は、07年、30億ドルを米投資ファンドであるブラックストーン・グループに出資することを決定した。
現在、欧州の景気が堅調なため、ユーロ金利が上昇しているが、それでも4%程度であり、当面、世界的な低金利が続くと予想される。つまり、今後もファンドへの資金流入は続き、そのことが世界規模での大再編を後押しするということだ。
供給過剰が業界再編を促す
世界的な「供給過剰」も業界再編を促している。