2007年12月号掲載

モノづくり幻想が日本経済をダメにする 変わる世界、変わらない日本

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著者紹介

概要

日本は今、先進国から取り残されつつある。国の屋台骨たる産業構造が古いままなのだ。欧米各国がその比重を金融業などに大きく傾けつつある中、わが国はいまだモノづくりにしがみついている。だが、アジア諸国の追い上げもあり、日本の製造業が優位性を保っていられる時間もそう長くはない。著者は、こうした現状に警鐘を鳴らし、その向かうべき道を指し示す。

要約

世界は大きく変わった

 第2次大戦後、イギリスの経済的地位は低下し続けた。1970年代には「英国病」と呼ばれるほどその状況は悪化し、90年代初頭の同国の1人当たり国内総生産は、日本の半分程度だった。

 だが2004年、それは日本を上回る値となった。イギリスは、なぜ復活したのだろうか?

 その原因として、サッチャー首相による民営化や規制緩和などが指摘されることが多い。確かにこれらは事実だ。だが重要な点は、それらが製造業を復活させたわけではないということである。

 イギリスの製造業は、今も弱体化したままである。しかし、それがむしろ同国の経済発展には有利に働いた。この点こそ、「モノづくり」にしがみつく日本が学ぶべき重要な点であろう。

 イギリス経済を復活させたのは、高度なサービス産業、とりわけ金融業である。

 86年、サッチャー政権は、金融の大幅な規制緩和策「ビッグバン」を実施した。その結果、激しい競争が生じ、イギリスの金融機関のほとんどは外国の金融機関に買収されるか合併された。

 特に、古くからイギリスの金融業を牛耳っていた伝統的投資銀行であるマーチャントバンクは、ロスチャイルド銀行を除いて、ほぼ姿を消した。

 そして、ロンドンで活躍するのは外資系金融機関ばかりという状態になった。これを「ウィンブルドン現象」と呼ぶ。これによって、実力ある金融機関だけが生き残るという現象が進んだのだ。

プレーヤーが交代した英国、しなかった日本

 日本もビッグバンをまねて、96年から2001年にかけて金融規制緩和を行った。しかし、日本の金融業は沈滞したままだ。

 何が両者の違いをもたらしたのか?

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