2007年12月号掲載
イスラム金融入門
著者紹介
概要
最近、新聞等でよく目にするようになった「イスラム金融」。イスラム法に則ったこの金融取引は、今、急速にグローバル化が進んでおり、英国やシンガポールなど非イスラム圏の金融機関が積極的に関与し始めている。今や国際金融界で不可欠な存在ともいえるイスラム金融とは、いかなるものか。本書では、その基礎知識から実践的な知識までを平易に解説する。
要約
イスラム金融とは
イスラム金融を端的に言い表すと、「イスラムの教義に適った金融」と定義することができる。
イスラム教における規範や法を意味する語として「シャリア」というアラビア語が用いられるため、「シャリアに適った(シャリア適格)金融」と呼ばれることもある。
シャリアは、法律のみならず、日常生活における行動規範をも含む、広い意味でのイスラム社会のあり方を意味する概念である。
そのシャリアに適ったイスラム金融の具体的な特徴は、以下の2点に要約される。
- ①金利という概念を用いない
- ②当該金融取引の関連する事業につき、シャリアに反するものは排除される
①は、経典「コーラン」で利息(リバー)が禁じられていることによるもので、取引において金利の概念を用いることは許されない。
②は、豚肉やアルコール、賭博、武器といった事業と関係を持つことを禁止するものである。例えば、酒造会社への融資、武器製造業への出資等は許されない。
このように、イスラム金融ではシャリアに適っていることが必要条件となる。
そのこともあって、イスラム金融サービスを提供する機関には、通常、シャリア学を修めた学者で構成されるシャリア諮問委員会とも言うべき機関が設置されている。
この機関は、イスラム金融機関が提供する各種取引につき、あらゆる観点からシャリアに反していないことを審査した上で認定する。
イスラム金融の急成長とその背景
イスラム金融の世界的な市場規模は、2005年末時点で7000億〜1兆ドルに上ると推計される。