2014年7月号掲載
夢の国から悪夢の国へ 40年間続いたアメリカン・バブルの大崩壊
著者紹介
概要
本書の目的は、「アメリカが今どんなにひどい国になってしまったかを、できるかぎり克明にお知らせすること」だと著者は言う。利権の横行、病的肥満者の増加、富裕層の流出に伴う都市の荒廃…。米国では、好調な金融業界だけ除いて、あらゆる分野で歪みが拡大している。そうした現状および原因を述べ、「日本は間違っても米国のマネをしてはならない」と警告する。
要約
経済金融化の分水嶺は1974年
第2次世界大戦後から1970年代半ば頃までは、米国は世界中の人々にとって夢の国だった。
だが、光り輝く夢の国はその後、お世辞にも優雅に成熟したとはいえない。
1950年と2012年の米国を比較した表がある。それを見ると、50年には富裕な都市だったデトロイトが、今では問題山積の都市に。他の項目を比べても、何ひとつ良くなったものはない。株式市場だけが異常なほど好調なのを除いて ―― 。
米国の1975~99年は「奇跡の四半世紀」だった
第2次世界大戦以降の米国の株式市場で、長期にわたり大幅な株価上昇が見られた時期は、ほとんど1975~99年の25年間に集中している。
その最大の理由は、74年に成立した「個人退職所得保障法」が、個人の退職年金資金を大量に株式市場に誘導したことだった。1946~64年生まれのベビーブーム世代がどんどん労働市場に参入し、退職年金を積み立て始めたのだ。
その数値を見ると、民間個人退職年金全体の残高は、1974年の1780億ドルから、2012年第3四半期までで6兆6000億ドルに増えた。約37倍だ。
そのうち、株と投信で運用されている部分の残高は、740億ドルから4兆6250億ドルヘと60倍以上に膨れ上がった。これなら、米国の株式市場が好況を謳歌していたのも不思議ではない。
金融業界は、不況知らずの好業績を続けた
当然、これだけの資金が株式市場に流入し続けたことで、金融業界も好業績を確保し続けた。
金融業の利益総額が、民間企業部門全体の利益総額に占めるシェアは、1950年代末には20%強だった。だが、ハイテク・バブルのピークでは約75%を占めるほど、金融業の肥大化が進んでいた。
最近の4年間では、金融業利益の企業総利益に占めるシェアは45~55%。就業者数では全企業部門の6~7%、売上高でも全企業部門の15~20%程度を占めるにすぎない企業部門が、これだけの利益を上げているのだ。
やはり、いびつな経済といわざるをえない。