2007年12月号掲載
メタボの罠 「病人」にされる健康な人々
- 著者
- 出版社
- 発行日2007年10月30日
- 定価792円
- ページ数175ページ
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著者紹介
概要
「ウエスト周囲径、85㎝以上」というメタボリックシンドロームの基準には、中年男性の大半が該当する。だが実は、この数値には病理学的根拠が乏しい。にもかかわらず、厚労省はなぜこれに固執し“病人”を増やそうとするのか? その背景にあるのは産官学の癒着だ。本書は、このメタボ基準のでたらめさを検証し、日本の保健行政の構造的な欠陥をえぐり出す。
要約
メタボリックシンドロームという嘘
2006年5月、厚生労働省により、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準となる数値が発表された。それは、次の通りである。
- ・ウエスト周囲径
- 男性:85㎝以上、女性:90㎝以上
- ・さらに次の1つに該当すれば予備群、2つ以上に該当すればメタボリックシンドローム
- 血圧:最高血圧130mmHg以上、または最低血圧85mmHg以上
- 脂質:中性脂肪150mg/dl以上、またはHDL40mg/dl未満
- 血糖:空腹時血糖値110mg/dl以上、またはHbA1c5.5%以上
そして、この数字とともに、メタボリックシンドロームの疑いが強いか、その予備群と見られる人は、40〜74歳男性の約半数、女性でも5人に1人が当てはまり、該当者は全国で約1960万人と推定される、と発表された。
ウエスト周囲径85㎝以上と言えば、小太りな男性なら、ほぼ当てはまる。発表されたこの数値に、ショックを受けた人は多かったのではないか。
実は、この基準は、厚労省の発表の1年前に、学会誌で発表されている。日本を代表する8つの医学会の連名で発表されたため、医師の間でも話題になった。
日本のウエスト周囲径の基準値を海外と比較すると、その奇妙さは一目瞭然である。男性が女性より小さいのは、日本だけなのだ。
それを受けて06年秋には、国際糖尿病連合から「日本のウエスト周囲径の基準は、奇妙だから使わないように」との宣言文が出されている。
このように日本版メタボリックシンドロームは、根本から見直しを迫られているのである。
厚労省は、なぜ基準を決めた時ではなく、1年後に発表したのか。そして国際的な批判を受けながら、なぜこの基準を引っ込めようとしないのか。
そこには、重要な意味が隠されている。
厚労省は、医療改革として08年度から実施を予定している「メタボリックシンドロームに基づく特定健診・特定保健指導」を含む法案を、国会で通す必要があったのだ。
特定健診・特定保健指導とは、40〜74歳の人を対象とした新しい健康診断制度で、老人基本健診と、職場健診を統合する健康診査のことである。