2021年2月号掲載
スマホ脳
Original Title :SKÄRMHJÄRNAN
- 著者
- 出版社
- 発行日2020年11月20日
- 定価1,078円
- ページ数255ページ
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著者紹介
概要
今、大人は1日4時間、10代の若者は4~5時間をスマホに費やす。だが、スティーブ・ジョブズはじめIT企業のトップには、わが子にデジタル・デバイスを与えない人が少なくない。それらが脳に与える影響を、彼らは見抜いているのだ。依存、学力低下、孤独感…。精神科医がスマホの弊害を明らかにし、デジタル社会に警鐘を鳴らす。
要約
スマホは最新のドラッグである
人間の脳はデジタル社会に適応していない。
ここ10年、人々のライフスタイルは一気にデジタル化した。こうした行動様式の変化は、人類史上最速のものだ。それは私たちの心の健康にどんな影響を及ぼすのか。
私は精神科医だが、近年、精神的不調で受診する人がますます増えている。スウェーデンでは、大人の9人に1人以上が“抗うつ剤”を服用しているし、同様の統計が多くの国で見られる。
なぜ、これほど多くの人が、物質的には恵まれているのに不安や孤独を感じているのか。
答えの1つは、今、私たちが暮らす世界が人間にとって非常に異質なものだという事実だ。このミスマッチ、つまり、私たちを取り巻く環境と、人間の進化の結果が合っていないことが、私たちの心に影響を及ぼしているのだ。
今のこの社会は、人間の歴史のほんの一瞬にすぎない。地球上に現れてから99.9%の時間を、人間は狩猟と採集をして暮らしてきた。私たちの脳は、今でも当時の生活様式に最適化されている。生物学的に見ると、私たちの脳はまだサバンナで暮らしているのだ ―― 。
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現在、私たちは1日に2600回以上スマホを触り、10分に1度スマホを手に取っている。どこにいても、誰もが自分のスマホをじっと見つめている。私たちは依存してしまっているのだ。
なぜ、そうなったのか。答えは、私たちの脳内の報酬システムにある。
ドーパミンの役割
脳内の伝達物質であるドーパミンは、よく報酬物質だといわれるが、実はそれだけではない。ドーパミンの最も重要な役目は、私たちに何に集中するかを選択させることだ。
空腹時に食べ物が出てきたら、それを見ているだけでドーパミンの量が増える。つまり、増えるのは食べている最中ではない。それを食べるという選択をさせるために、ドーパミンが増えるのだ。