2008年2月号掲載
ホンダをつくったもう一人の創業者 受け継がれる藤沢武夫の教え
著者紹介
概要
「もう一人の創業者」とは、実質的なホンダの経営者として、本田宗一郎氏の独創的なものづくりを支え続けた藤沢武夫・元副社長のこと。人間尊重の企業文化や顧客第一のビジネス哲学など、今日のホンダの経営は全て藤沢路線の延長上にある。ホンダの社員として藤沢氏を直接知る立場にあった著者だからこそ書けた内容で、一読の価値がある。
要約
「人間尊重」の経営哲学
ホンダにおいて、本田宗一郎は社長、藤沢武夫は常務、専務から副社長と、常にナンバーツーであった。しかし、実質的には対等な同格の経営者だった。
本田氏はホンダの技術・開発部門の長として車づくりに専心し、藤沢氏は販売・営業部門の長として経営を担った。藤沢氏が本田氏に決裁を仰ぐことはなく、互いに干渉は一切なかった。
2人が出会ったのは昭和24年のこと。この時、藤沢氏はこう言った。
「近視的にものを見ないようにしましょう」
この言葉に、2人の考え方が凝縮されている。それがとりもなおさず、ホンダの企業理念のあり方につながっていくのである。
人間尊重企業
ホンダの根底に流れるものは人間尊重のヒューマニズムであり、そこから発する平等主義である。
藤沢氏は、社員に「人間感情の尊重」という言葉で、人間尊重の精神をよく説いた。
例えばホンダでは、部品納入業者を「下請け」とは呼ばない。納入業者も販売店も、対等なパートナーだ。藤沢氏は、分け隔てなく相手の感情を尊重して対応するよう、社員全員に求めた。
工場では、全員が同じ作業衣を着る。これも平等主義の現れで、個人の差は、仕事におけるアイデアや努力で出せばいいと考えているのである。
ホンダの基本理念「人間尊重」は、「3つの喜び」で具現化されている。すなわち、「買って喜び、売って喜び、作って喜ぶ」である。
「買って喜び」を真っ先に挙げているのは、顧客の喜びが最も大切だと考えているからだ。