2008年5月号掲載
「今のロシア」がわかる本
- 著者
- 出版社
- 発行日2008年4月10日
- 定価586円
- ページ数237ページ
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著者紹介
概要
冷戦の終結以降、低迷を続けてきたロシアが今、GDP成長率が8%という「新生ロシア」に生まれ変わり、再び存在感を増しつつある。なぜ、ロシアは急激に復活したのか? そして対米、対欧州の関係はどうなっているのか? 本書は、復活のキーマンであるプーチン大統領のこれまでの歩みと功績を追うとともに、「プーチン・ロシア」のこれからの戦略を描き出す。
要約
プーチンの野望がこの国を動かす!
1999年12月、健康状態の悪化を理由に、ロシアのエリツィン大統領が辞任を表明。そして、翌2000年3月の大統領選において、プーチンが国民の圧倒的な支持を受け、大統領に選出された。
当初、プーチン政権は、共に大統領の出身母体である治安機関と軍の関係者を中心とするグループ(シロヴィキ派)、サンクトペテルブルク出身の実務家を中心としたグループ(サンクト・リベラル派)、そして、新興財閥グループ(オリガルヒ)の“混成旅団”としてスタートした。
ところが、政権内でシロヴィキ派が主導権を獲得すると、エネルギー利権などを握っていたオリガルヒとの対決構造が生まれてきた。
追い詰められていることを感じ取ったオリガルヒたちは、所有するマスメディアを通じ大々的なプーチン批判を行う。これに対してプーチン側は彼らを汚職などの罪に問い、追い詰めていった。
プーチンがオリガルヒに対して強硬姿勢を貫いた背景には、エリツィン時代に著しく弱体化した国家権力の再強化という明確な狙いがあった。
オリガルヒの1人であるミハイル・ホドルコフスキーが所有していた、当時ロシア最大の石油会社ユコスを例に取るとわかりやすい。
ユコスは、石油を外国に輸出することで莫大な収益を上げていた。当時、ロシアの税制はオリガルヒに有利な形で整備され、国家が税金を徴収しにくい仕組みになっていたからだ。
プーチンはかねてより石油産業に対する税・法制度の抜本改革を試みてきたが、これを阻止してきたのがユコスを中心とする石油ロビーだった。
こうした状況の中、03年7月、プーチンは影響力を蓄えつつあったシロヴィキ派の力を背景にユコス攻撃を開始し、同年10月にはホドルコフスキーを脱税・横領容疑で逮捕する。
04年4月には、ロシア下院は石油輸出税と石油採掘税の増税に関する2つの石油関連法案を圧倒的多数で、しかもたった1日の審議で採決した。
かなり強引な手法だったが、プーチンの断行した税制改革と折からのエネルギー資源価格の高騰が相まって、一時は債務不履行の一歩手前にまで陥った政府の財政基盤を立て直す大きな転機となった。その結果、ロシアは今日の、世界第3位の外貨準備高を誇る国へと変貌したのである。