2008年8月号掲載
暴走する資本主義
Original Title :SUPERCAPITALISM
著者紹介
概要
市民、労働者を軽んじる今の資本主義 ――「超資本主義」のあり方に、警鐘を鳴らした書である。経営者は絶えず競争に追い立てられ、労働者は失業の不安に怯えながら生きる。こうした弱肉強食の社会になったのは、資本主義が暴走し、民主主義を締め出しているからだ、と指摘。現在の資本主義のもたらす、社会的な負の側面を克服するにはどうすればよいのかを説く。
要約
「超資本主義」への道
第2次世界大戦が終わった1945年から、石油危機後の75年にかけ、米国は資本主義と民主主義の両立という輝かしい成果を挙げた。
この時期、米国民の所得格差は最も小さく、十分な収入の仕事が創出され、かつてない経済的安定を人々にもたらしていた。また、政治の面でも国民は民主主義に誇りを持っていた。
だが、70年代後半から、米国の民主的資本主義には根本的な変化が生じた。経済構造がそれまでよりずっと競争的になり、その一方で、資本主義の「民主的な」側面は影が薄くなったのである。
資本主義の暴走、つまり民主的資本主義に代わり「超資本主義(スーパーキャピタリズム)」と呼ぶべき状況が生まれたのだ。
では、それは一体どのように起こったのか?
巨大寡占企業の弱体化
過去の生産やサービスの仕組みは、今日に比べ、ずっと予測しやすく安定していた。
例えば、自動車業界のビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)のように、生産やサービスは少数の大企業が担っていた。
これら巨大企業は、大量生産の恩恵を得るために競争を最小限に抑えようとした。また、生産を中断する労働ストライキが起きないよう、労働者に対して収益のかなりの割合を分け与えた。
その一方、消費者や投資家の選択肢は限定され、「お買い得な」取引をするのは難しかった。
だが70年代半ばから、巨大寡占企業の地位が揺らぎ始め、売上、利益、雇用が大幅に変動するようになった。自動車業界では、日本の3社が加わり、6大企業で激しい競争を行うようになった。巨大な数社が牛耳っていた航空業界は、運賃自由化の下、今では数十社が熾烈な競争をしている。
先述の通り、昔の巨大企業は、規模の経済の上に成立していた。2、3の支配的企業が新規参入者を恐れることなく、価格や生産量を決めていた。