2008年10月号掲載
がん検診の大罪
著者紹介
概要
国が奨励するがん検診には、有効性を示す根拠が全くない!? 予防医療学の専門家が、各種データの詳細な分析をもとに、がん検診に有効性がないこと、さらには発がんの危険性すらあることを明らかにする。がん検診の他、メタボ健診や薬剤投与の問題点などについても論及、「健康で長生きをする」という本来の目的を見失ったわが国の医療に警鐘を鳴らす。
要約
がん検診は本当に有効か?
医療には、昔から常識とされる事柄が多くあり、それらに基づいて様々な行為が行われてきた。
例えば「がんは早く治療すれば治る」という常識のもとに、「定期的にがん検診を受けよう」といった指導が国をあげてなされてきた。
しかし、この常識は本当に正しいのだろうか?
以下、がん検診の常識を検証してみると ――
突然中止された小児がん検診
神経芽腫は、生後間もない赤ちゃん、あるいは小児に起こる特殊ながんである。
その早期発見のために、1973年、世界で最初の集団検診が京都で開始された。検診対象は、生後6カ月の赤ちゃんだった。
やがてこの神経芽腫検診は外国でも知られるようになり、カナダのケベック州では有効性を検証するための調査を5年がかりで行うことになった。
同州の集団検診では早期がんが多く見つかった。ということは当然、手遅れのがんは減っていないとおかしい。だが、調査期間中に手遅れのがんと診断された赤ちゃんを数えたところ、減少傾向は認められず、死亡率は一向に低下しなかった。
では、この検診で見つかった早期がんは、一体何だったのか。
患者のサンプルを遺伝子分析した結果、意外な事実がわかった。この病気の発生には、2つのタイプの遺伝子異常が関わっていたのである。
1つは1歳以下に多く、特別な治療をしなくとも自然に治るタイプ。もう1つは比較的年長の子供に多いタイプで、悪性度が高く、治療法がない。