2009年1月号掲載
人の上に立つ人の 「見識」力
著者紹介
概要
近代日本の偉大なリーダー、渋沢栄一は『論語』の思想を自らの生き方の基本としてきた。そんな彼が、自身の体験、論語や先哲の言葉を引きつつ、人の生き方を説いた書である。望ましい人生観、真の成功、困難の克服法等々、“人間力”を高める上で心に留め置きたい様々な話が披露される。(なお、本書は明治45年刊の渋沢の著書『青淵百話』を再編集したものである)
要約
渋沢栄一の見識力
自分の器を大きくし、人間力を増す。
そのためには、次のようなことを心に留めておく必要がある。
人間の「大きさ」を決める2つの人生観
人生観は、2つに大別される。自分の存在を客観的にみるか、主観的にみるかのどちらかである。
客観的というのは、自分の存在は第二として、まず社会のあることを思い、社会のためには自分を犠牲にしてもよいというまでに、自我を殺してしまうものだ。主観的というのは、自分を第一に考え、次に社会を認めるという考え方である。
孔子の教えに、「仁者は己れ立たんと欲してまず人を立て、己れ達せんと欲してまず人を達す」というものがある。
人を立て、その望みを達成させてから、自分が望みを達しようとする働きを示したもので、君子のような人の振舞いの順序はこうあるべきものだと教えたのである。
孔子はまた、「克己復礼」を説いた。自分のわがままな心に打ち勝って、礼に従って生きさえすれば世の中は間違わないわけで、この考えも客観に当たる。
例えば、養育院の浮浪少年は不幸者ばかりで、女に溺れ、賭博で身を崩すなど、とにかく感心できない者が多い。
彼らを統計的に調べてみると、一貫した共通性がある。それは、自分さえよければ他人はどうでもかまわないという考え方である。
もし、彼らの主張通り、自分の都合ばかりを考えているなら、彼らは大変いい身分になっていてもよさそうなのに、実際はそうではない。
自身のことばかりを考えていることが、かえって自分のためにならず、不幸に陥る原因となるとすれば、それと反対に客観的にわが身を考える人は、他人のためを思うことがかえって、いかにわが身のためとなるか、容易に推測できるだろう。