2009年2月号掲載
覇権の終焉 アメリカ衰退後の世界情勢を読み解く
- 著者
- 出版社
- 発行日2008年12月12日
- 定価1,047円
- ページ数221ページ
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著者紹介
概要
イラク情勢の泥沼化や世界金融危機により、米国は今、大きく国力を落としつつある。その結果、“唯一の超大国”米国を中心とした国際秩序は崩れ始め、世界は「多極化」へ向けて動き始めた。本書では、国際政治学者の著者が、先行き不透明な今日の世界情勢を見通し、もはや米国頼みでは立ち行かなくなった、わが国の国家戦略のあり方について論じる。
要約
アメリカの覇権の終焉
歴史には「分水嶺」というものがある。長年続いてきたものも、変わる時には一瞬にして変わる、ということである。
2008年、この1年で世界は急激に変化し、冷戦終焉以来、20年ほど続いてきた国際秩序の構図は一変しつつある ―― 。
全ては湾岸戦争から始まった
冷戦後のアメリカ政権は、「唯一の超大国」路線、つまり「アメリカ一極の世界秩序」の実現へ向け、一本調子で「それ行けドンドン」のスピリットに衝き動かされた世界戦略を推進してきた。
それは、「湾岸戦争スピリット」と呼んでもよいもので、湾岸戦争での目覚ましい勝利の後、アメリカの姿勢には一貫して、ある種の「歴史への傲慢さ」が目に付くようになった。
1990年代のアメリカは、IT革命の熱気の中で経済バブルを作り出した。そこでは「ニュー・エコノミー」の名の下に、もはや不況や恐慌から解放された経済運営が可能となった、と語られた。
しかし、このバブルは01年に破裂する。だがその反省もないまま、住宅価格を最新の金融工学を駆使して膨らませていく「サブプライム・バブル」が起こり、今日の奈落へと突き進んでいった。
バブル現象はどこの国にも、いつの時代にも見られるものだ。しかしアメリカのそれは、一見、体系的に見える“壮大なヴィジョン”を付けて、あたかも「全く新しい世界が始まる」という幻想を作り出し、それがバブルを一層煽り立てる。
また、アメリカのそれは唯一の超大国であるという国際政治上の地位と結びついて、経済だけでなく、軍事や外交などにもその熱狂心理が反映され、しばしば国際情勢に激震をもたらすような「オーバーシュート(やり過ぎ)」にまで至る。
このメカニズムを根底で支えているのは、唯一の超大国という自己認識と、何があってもそれを維持すべきという国策である。
今回のサブプライム危機、イラク戦争をはじめとするテロとの戦いなど、現在アメリカが陥っている苦境の多くは、湾岸戦争以来のこの自己認識に根本的な原因があるといってよい。
全ては、あの湾岸戦争に始まっているのである。