2009年4月号掲載
アメリカモデルの終焉 金融危機が暴露した虚構の労働改革
著者紹介
概要
成果主義、時価会計、J-SOX法…。わが国に導入された米国流の手法、制度が今、立ち行かなくなっている。原因は、それらが機能するための前提を無視し、他国のやり方をそっくり真似たことにある。本書では、長らく米国に暮らし、同国の教育やビジネスの現場を熟知する著者が、一連のアメリカモデルによる改革の失敗を検証、日本が今後進むべき方向性を指し示す。
要約
成果主義の失敗を招いた3つの軸
米国の社会制度は、日本にとって長い間の目標だった。特に、1990年代から2000年代前半までの時期は、最も「アメリカモデル」が意識された。
理由は様々だが、この時期、米国が国際金融とIT革命を通じたグローバリゼーションで、空前の景気を実現していたことが大きい。
その結果、日本でも国際化が叫ばれ、金融自由化や規制緩和、構造改革などが進められた。
だが、06年の安倍政権誕生の頃から、「格差の拡大」など改革の副作用が明らかになっていく。
そして、08年9月に表面化した米国発の金融危機で、全てをリセットせねばならなくなった。この事件は、日本が追い求めてきたアメリカモデルが、一瞬のうちに消え去ったことを意味する。
* * *
90年代、日本では、一連のアメリカモデルの改革のスタートとして、多くの企業で「成果主義」が導入された。だが、この成果主義こそが、アメリカモデルの改革の典型的な失敗例である。
その理由は1つ。制度の導入時、それが機能するための前提がほとんど無視されたことだ。次の通り、日米の組織は3つの軸において構成が違う。
組織のヨコ軸=他人の職域を侵すな
まず、社員が同僚との間で、互いの守備範囲をどう決めているかという「ヨコの軸」が違う。
成果主義が機能するには、個々の社員の責任範囲が明確でなくてはならない。従って、「同僚の責任範囲を侵してはならない」というのが、米国の組織では鉄則になっている。
日本では「助け合う」というのが組織の原則となっているが、これはダメなのである。