2009年5月号掲載
[新装版]心を高める、経営を伸ばす 素晴らしい人生をおくるために
著者紹介
概要
1989年に刊行された同名書の新装版。ご存じ、京セラの創業者・稲盛和夫氏が、自身の人生観や経営哲学について語る。「常に原理原則を基準として判断し、行動する」「商いの極意はお客様から尊敬されること」…。これまで、多くの人に示唆を与えてきた氏の言葉は今日においても、色褪せることなく、説得力をもって心に迫る。
要約
素晴らしい人生を送るために
人生とはドラマであり、それを演ずる主役が自分である。一生かけてどういうドラマを描くかが、私たちには問われている。
運命は生まれた時から決まっている、と言われるかもしれない。しかし、自分の心、精神を高めることによって、運命は変えることができる。
つまり運命に抗するのではなく、心と精神を作っていくことで、自らドラマの主役になれる。
それには、自分を変えるような衝撃的なきっかけが必要である。そのようなきっかけは人生の節々にあるはずだが、受け取る側のエネルギーが高まっていないと、何事もなく過ぎ去ってしまう。
怠惰に目的意識もなく生きた人と、真剣に生きた人では、人生というドラマの展開は大きく変わってくるのである。
まず思う
昭和40年頃、松下幸之助さんは講演会で、ダムをつくって常に一定の水が貯えられるような、余裕のある経営をやるべきだ、という話をされた。
すると1人が、「今余裕がないのをどうすればいいのか、それを教えてほしい」と質問をした。
松下さんは、「そんな方法は私も知りませんのや。知りませんけれども、余裕がなけりゃいかんと思わないけませんな」と答えられた。
すると、「全然回答になっていない」と皆が失笑した。しかし、この言葉は極めて重要である。
松下さんは、「まず思わなかったら、そうはならない」ということを言われたのだ。
人は、自分が信じてもいないことに努力できるはずがない。心からその実現を信じることが、困難な状況を打開し、物事を成就させるのである。