2009年10月号掲載
グリーン・ニューディール グリーンカラー・ジョブが環境と経済を救う
Original Title :THE GREEN-COLLAR ECONOMY
著者紹介
概要
温暖化をはじめとする地球環境の問題。そして、米国などで顕著な貧富の格差の問題。これらを同時に解決するカギは、環境負荷の少ないグリーン産業の発展を促しつつ、その経済的恩恵を全ての人が享受できるようにする「グリーンカラー・エコノミー」の実現にある。そう主張する著者が、この新しい経済システムの重要性、現状、未来に向けた動きについて熱く語る。
要約
新世界への道
米国は、外国から石油を買うため、毎年10億ドルの借金をしてきた。また、石炭や石油の生産者に、毎年1兆ドルもの補助金を与え続けてきた。
その結果、50年前には世界の富の半分を保有していた米国は文無しになった。
一方、スウェーデンは1991年には炭素税を導入し、2基の原子炉を廃止した。そして太陽光や風力などからエネルギーを生み出す方法を開発しようと、多くの起業家が立ち上がった。その結果、経済成長率は上昇し、米国の3倍の水準に達した。
アイスランドは70年代には石炭と石油の80%を海外に頼る、貧しい国だった。だが今や、エネルギー自給率は100%に達し、全世帯のエネルギー需要の90%を地熱、10%を水力発電で賄う。
実は、米国はアイスランドやスウェーデンをはるかに凌ぐエネルギー資源を持っている。
地熱源は世界で2番目に多い。中西部は風力発電の宝庫で、テキサスなどの3州だけで、全米のエネルギー需要を賄うのに十分な風量がある。
米国で、スウェーデンなどのような革命を実現できないのは、次の4つの障害があるからだ。
- ・巨額の補助金が石炭・石油産業の市場競争力を高め、再生可能エネルギーの成長を阻んでいる。
- ・現在の非効率な送電網は、新しいタイプのエネルギーを運ぶことができない。
- ・地域ごとに複雑な規制が存在し、イノベーターが全国市場にアクセスするのを阻んでいる。
- ・政府が民間セクターに対し、グリーンな建物や設備の導入を促すような優遇策を設けていない。
エネルギー革命を促進するためには、これらの障害を解決しなければならない。
現状の解決に意欲を燃やす投資家、ステファン・ドレザレックは「二酸化炭素を出さない経済の実現など数十年先だ」という考えを一笑に付す。
彼は、「適切な促進策と自由にアクセスできる市場があれば、数年以内に米国の電力システムを完全に脱化石燃料化できる」と言い切る。
クリーンエネルギーの分野に資本や起業家が集まれば、数百万人分の雇用が生まれる。貿易赤字や財政赤字を年間数千億ドル単位で減らすことができ、国民の健康や農業生産も上向くはずだ。