2010年5月号掲載
日本型キャリアデザインの方法 「筏下り」を経て「山登り」に至る14章
著者紹介
概要
いい大学を出て、大企業に入り、定年まで全うする。こんな職業人生の標準形が崩れた今、自分の人生は自分でデザインしなければならない。では、どんなデザインが望ましいのか? 著者が勧めるのは、「筏下り-山登り」型のキャリアデザイン。激流にもまれて力を磨いた後、“プロフェッショナル”という山を登る、日本人にとって理想的だという形を紹介する。
要約
キャリアデザインとは
「キャリア」という言葉が日常的に使われるようになったのは、十数年ほど前のことである。
以前あまり使われなかったこの言葉が出てきたのには、それなりの社会的背景、必然性があった。
理由の1つは、職業人生が多様化したことだ。いい大学を出て大企業に入り、定年まで全うする、という標準形が崩れた。
また、個人の職業寿命が企業の寿命を追い越した、というのも大きな要因だ。仮に20歳頃から80歳まで働いた場合、60年間もの時間がある。それに対して、上場企業の寿命は約40年。嫌でもキャリアチェンジを経験しなければならない。
人生を開いていくためには、自分のキャリアについて自ら考える以外に道はないのである ―― 。
キャリアの節目に立ち止まる
では、キャリアについてじっくり考えるのは「いつ」か?
それは「節目」を迎えた時だ。大学卒業、就職、結婚、昇進…。一生のうちには様々な節目がある。
また、「ミドル」と呼ばれる30代後半~40代の頃は、誰もが節目を迎える時期といえる。
心理学者のユングは、人生にも午前の時間と午後の時間があり、40歳頃、ミドル期は「人生の正午」にあたるとした。
そして、この時期に、それまでの価値観が大きく変わり、新しい価値観を基に自分自身を作り上げる「個性化」の段階に入るという。
例えば、午前の時間である若い時には、同期に勝つことに価値観を置いていたのが、午後の時間では、損得や勝負ではなく、自分にとって価値があるか、ということが重要になってくる。