2010年8月号掲載
鈴木敏文の「話し下手でも成功できる」 セブン‐イレブン流「感情経済学」入門
著者紹介
概要
セブン&アイ・ホールディングスCEOの鈴木敏文氏は、「あがり症で人と面と向かって話すのが苦手」だという。だが、「聞き手の立場で」話すのを旨とする氏の話は、聞く人の心を捕らえて離さない。そんな鈴木氏の経営の基本は、「顧客の立場」で考えること。本書では、相手の心理を読むことで、数々の成功を収めてきた“鈴木流心理学経営”の要諦を紹介する。
要約
相手に伝わる「話し方」とは?
セブン&アイ・ホールディングスを率いる鈴木敏文CEOは、2つの顔を持っている。
1つは、徹底して顧客の心理を読む「心理学経営の達人」としての顔である。
もう1つは「あがり症で、人と面と向かって話すのが苦手」という顔。「子供時代は極度のあがり症で、人見知りがひどかった」と氏は明かす。
しかし今日、社内外で数多くの講演をこなすなど、話し方の名手として知られる。
今も基本的には人見知りだという鈴木氏に、なぜ、聞き手を引き込むような話ができるのか。
平易に、自分が知っていることだけを話す
鈴木流経営学の基本は、全てにおいて「顧客の立場で」考えることにある。話す時にも、常に「聞き手の立場で」話すことを基本とする。
例えば、人前で話す時、一番大切なのは、平易な言葉、平易な話し方をすることである。高邁な話より、平易な言葉の方が共感を呼ぶ。
一番よくないのは、借り物の話をすることだ。人は話をする時、格好よく思われようとして、本などを読み、そこから引用してネタに使おうとしがちだ。だが、そうした言葉に何の説得力もない。
内容は簡単でも、自分のものにした事柄を話した方がはるかに説得力を持つ。
身近な事例や例え話を盛り込む
また、鈴木氏は事例や例え話を多用する。
氏が話す内容は、昔から一貫して基本的なことばかりである。ただ、それだけでは飽きられてしまうので、事例や例えをその都度変える。