2010年9月号掲載
トレードオフ 上質をとるか、手軽をとるか
Original Title :Trade-Off:Why Some Things Catch On, and Others Don't
著者紹介
概要
お洒落なレストランで食事をするか、ファストフードにするか…。このように、人は商品やサービスを購入する際、「上質さ」と「手軽さ」のどちらかを選んでおり、ビジネスの成否はこの“二者択一”にかかっている。すなわち中途半端はダメ、という著者が、上質さと手軽さの両方を追って失敗したスターバックスの例など、様々な事例を引きつつ二者択一の概念を説く。
要約
上質と手軽の天秤
私たちは毎日、何かにつけて「上質さ」と「手軽さ」を天秤にかけている。
野球の試合をテレビで観るか、それともスタジアムへ行って観戦するか。ファストフードを食べるか、レストランで気の利いた食事をするか…。
こうした選択が市場でどう行われるかこそが、ビジネスの成功と失敗を解き明かすカギである。
上質vs手軽
上質さとは、経験全体を指す。ロックコンサートを例にとるなら、サウンドの質だけでなく、アーティストが演奏する姿、照明、周りの観客、そして後で知り合いに自慢すること。これら全てが、極上の経験を紡ぎ出す。
手軽さとは、望むものの手に入りやすさの度合いを表す。すぐに届くか、実行しやすいか、使いやすいか、いくらかかるか、などが焦点になる。
音楽の例では、iTunesから楽曲をダウンロードするのは手軽だ。好きな時にいつでもダウンロードでき、操作が簡単で、値段も安い。
その反面、極上とは言い難い。同じ楽曲でも、音楽の情報量はCDの10分の1にすぎない。
上質=経験+オーラ+個性
上質かどうかは、見たり触ったりなど、商品やサービスにまつわる経験全体によって決まる。その一方、「オーラ」と「個性」という、とらえどころのない2つの要素によっても成り立っている。
例えば、ロンドンの高級テーラーで作ったスーツは、強いオーラを放ち、上質感を増す。
そして、個性も上質さを構成する。
私たちが何かを購入するのは、他の人々に自分らしさを伝えるためでもある。洒落たブランドのスニーカー、デザイナーズ・ブランドのジーンズ…。個性の表現につながればつながるほど、そのアイテムは上質なものだといえる。